ネタバレあり

野口先生のエピソード、最初はどうなるかと思ったが
ほっとした。
デジタル化への移行は、コロナ禍においての
松田先生ご自身の経験も描かれているということだろうか。
「次の連載もお支えします」というアシさん、
「警察なら柔道部の先輩後輩にいつでも話聞けます」という黒沢さん。
とても心強い。

そんな用途になるとまで考えてのおすすめではなかったのだろうが、
アシさんが勧めてくれたWi-Fiスピーカーで
お父さんのTVの音問題が解決したのも良かった。
一緒に暮らしている人からしたら、ストレスが溜まっていって
かと言って小さくしろとお父さんに言えばお父さんがストレスになるしで
地味にきつい問題だ。

田舎でネットもつながらず、暇を潰せるカフェもなく
親の病院が終わるまで車で待機している間に
タブレットを導入することで漫画を描くというのは
それはそれで大変だろうが、
アシさんたちの協力で進んでいくところが素敵だ。

離婚の理由が子供ができないことで、
夫が「跡取りを」という親の意見を聞いてのこと
というのは悲しかった。
離婚以外にも取れる道はあったはずだが
『夫は良い息子であることを選んだ』
という先生のモノローグに、しんとした気持ちになる。
そんなプライベートの問題も乗り越えて、作品を生み出すのが恰好良い。
良い連載になって欲しい。

中田さんは自己管理できているようですごいと思う。
アユちゃんのバイト先の店長さん、不審に思ったらすぐ連絡してくださいと言ってくれてとても良い人だ。
アユちゃんの笑顔に救われる中田さんにほっとする。


雑誌の重版なってめったにないはずなのに、
刀剣特集の雑誌がそうなっていたな、と思いながら読んでいたら
ストレートに刀剣女子の話になっていく。

自分は刀剣乱舞プレイヤー(審神者)で、それ以前から刀剣愛好家なので
刀に纏わる話の展開は色んな意味ではらはらした。
自分のようなブーム前からそうでしたけど、という人は、歴女とか刀剣女子とかいう呼び方には
非常にナーバスになっている人が多いと思う。

高畑先生、刀剣女子に対して「女子供になにがわかる」
という感覚だったのだな。
「よく考えたら性別関係なかったわ」
と言ってくれているので良いのだが。

巻末に名刀大全の名前もあったので、おそらくほぼ取材した範囲での実話なのだろうと思う。
実際、自分は不勉強だが刀剣鑑賞会で同席する若い女性たちは本当に知識が深い。
「俺は何振持ってる。君は何振持ってるの」というマントおじいちゃんがいたが、
その人はとんでも知識を披露して主催者から
「それは違います」と言われていたくらいで
刀を持っていない女性の方が刀の肌や作りなどの知識が性格だった。
それに、これは自分もだが実際刀を持っている女性もいる。
最早一過性のブームを越えていると思うし
皆目が相当肥えている。
入門書は溢れているしネットでも十分なのは事実だし
真摯に専門的に作ってくれる方がファンも嬉しい。
最近のファンはお金の落としどころをわきまえている人が多いから
専門書並の価格と部数と内容でも、欲しいと思えば買ってくれる。

心が先生に、「刀剣に失礼のないよう作中で扱ってください」と言っているが、
コラボするからには適当にはされたくない。
逆に、丁寧な扱いをしてくれれば、この作家さん刀のことわかってるな、と
ファンがつくことにもなると思う。
刀剣乱舞のアニメ、活撃などがそうだろう。
鬼滅の映画が刀剣愛好家から褒められているのもそうだ。

刀剣写真は白黒が当たり前、という話、噴飯物である。
5年ほど前という最近の話でもそんな感覚だったのだ。
白黒しかない時代なら兎も角、今はカラーで撮影できる技術があるのに
その方法を取らないのは、『遺す』『渡す』という視点が欠けていると思う。
「どこの世界でも時間が止まったままの人がいる」
という田部井さんの言葉が響く。

自分は金も時間も自由になる専門職についた人とは程遠いけれど、欲しいものは価格が高くても買うし、大事にする。

手製本ができる会社を探し、ケースや紙、PP貼りなど様々な工程をそれぞれ、できる会社を手配し
コスト計算もしなくてはならない。
編集者とデザイナーは読者が本に出会う時を、
制作は保管状態や耐久性などの買われた後を考える。
見ているところが違うから意見も違うし
だからこそ複数の人たちが集まって作る意味がある。
「野暮より悪いことは不誠実。誠実は美の基本」
素敵な言葉だ。

蛍丸のエピソードを引いて、
熱心なファンたちが蛍だ、彼らが刀を蘇らせた
というのもとても良かった。自分もそう思う。


中田さんが心に担当に戻って欲しいと言ってくるが
担当冥利に尽きる言葉ではなかろうか。
アユちゃんから離れたほうがいいのかも、という中田さんに、栗山さんが
「大丈夫だよ!ごめん!大丈夫としか言えないけど、大丈夫だ!!」
というシーン。
栗山さんは元々心配して良かれと思って言った言葉が
中田さんを縛ってしまったことに気づいて
謝りながら大丈夫と繰り返してくれる。
中田さんに伝わっていれば良いのだが。