自販機破壊で1人から謝罪、北陸コカ・コーラは弁済求めず
https://www.yomiuri.co.jp/national/20240122-OYT1T50193/

自販機が壊された件、遅まきながら弊社でも話題になり。
結論として、災害対応機があるということ、どういう仕組みなのかを
もっと周知していかないといけないねという結論になった。


自分が初めて接客業に足を踏み入れた時、上司が
「お客さんは阿呆で我儘。甘い顔をするとすぐつけあがる」
と言って、なんて言い草だろうと思いはしたのだけれど実際のところ
本当にその通りで。
たとえばペン売場。試し書き用の紙があるのに、平気で什器や商品に書く。
試し書き用の紙を大きくしたら、何色も使った大作イラストを頻繁に書かれてしまう。
商品なのにそんなにインクを使われては堪らない。
試し書きを禁止することにして、勿論そういった注意書きを貼る。
しかし見ていないので、什器や商品に落書きをする。
そこでキャップが外せないようにテープで止めてると、無理やりテープを剥がして書く。
テープでは足りないかと包装をしても剥がされる。
全部下げて試し書き用のサンプルを出して欲しい場合は声掛けをしてくれと書くと肝心の売り上げが下がる。

試し書きをしたいのですが、と声をかけて下さる方も中にはいらっしゃる。
どうぞ!と包装を剥がして良かれと思って試してもらうと、
今度は別の試し書きが本当に無理な商品についても
「前はさせてくれたのに」と言われる。

試し書きはサンプルのみOKとし、他はキャップをテープ止め。
什器に落書きされたらすぐに消す。大作を書かれたらすぐ紙を替える。
手が空いているときはペン売り場の近くで品出しなどをしながら
できるだけ監視し、声をかける。
例外のお願いを聞くときは、「今回だけですよ」を強調する。
がうちの売場で取った対策だったが、
何百本とあるペンをテープ止めするのも巡回し都度拭き掃除をするのも骨が折れる。
商品のキャップを取ったりイラストを書こうとする人に声かけをすれば
この店の店員うるさいと文句を言われる。
今回だけですよ他言無用ですよと言っても
前はしてくれた、誰々にやってもらったって聞いたが発生する。

ルールは守る側にも得がないと守られない。
試し書きを制限することでインクが減りペン先が潰れたペンを買わされるリスクは減るのでお客様にも良いことのはずだけれど、
ルールを守らない人はそもそもペンを買う気がなくてただ落書きがしたいだけといケースも多い。
自分には関係ないルールだから守らないし、そもそもルールに気が付かない。たとえ目の前に『試し書き禁止』と赤文字で書いてあろうともだ。


自販機の話に戻るが、本来自販機を破壊するのはかなりのコストがかかるはずなのだ。
ATMを破壊しようと思うのに匹敵する。それくらい強固に作ってある。
だから、破壊するより復旧を待とうという発想に本来なるはず。
災害対応機の存在を知らなくてもだ。
知っていたら猶更、そのままにしておいた方が復興期にも利用でき
温かい飲み物も飲めるから利点がある。

今これを壊してでも水分を取らなければしんでしまう。
そういう極限状態なら、完全に体力を失う前に壊そうという発想になっても理解できる。
だが今回のケースはその日の夜に避難所での話だ。

避難所に備蓄が一切なく、地震が起きたその日にもう詰んでしまうなら
避難所の意味がないのでその問題は解決するべきだが、
避難所に備蓄がなかったのも、避難所の事自販機が災害対応機種ではなかったのも
停電のせいで遠隔操作ができなかったのも
避難所サイドの問題で自販機会社の問題ではない。
善意で災害時には無料で中の飲み物を提供してくれているだけで
本来タダではない。その上自販機を壊されたら飲み物+自販機の損害だ。

非常時だから仕方ないという擁護が多くて驚いたが
まだ無料で飲んでいいですよと言われない内から勝手に飲むのは窃盗だ。
非常時だから許されるだろう、は自販機会社の厚意に甘え過ぎである。
ノブレスオブリージュは持てる者が言い出すことで、
持たない側が「持っているんだから寄越せ」と言うのは略奪だ。

正直周知したところで、という気もするが、こういうことを0にするのではなく
可能性をできるだけ下げることしか結局はできない。

守ってもらえるルールを作ることは、本当に難しいとつくづく思う。

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