表現が生々しく、下世話に感じるところがある。
好みだとは思うが、たとえば芸能人の名前が出てくるところなどで
ふっと夢から醒めてしまう感じがあるし
ストレートに簡単に酷い事件がいくつも起きてしまうのが
現実はそんなもんだとも思いつつも自分は受け付けなかった。


後半に比べたら、前半のあり得ない熱を帯びたひばりと
年頃の男なのに普通に受け入れているつばさの描写の方が
まだ受け入れられた気がする。

僕たちにとって人として正しく生きることは、こうなってしまった人生に対する復讐なのだ
というのはよく分かる。

つばさの父親が亡くなったことについて、
高尚なことを考えていた訳じゃない、反射みたいなもの
という母親の言い草もしっくりきて良かった。

親とうまくいっていないのに
一緒に過ごしているとふっと戻った感じがして、
これなら縁を切らなくて大丈夫かもと思う
というのも分かるし
そこで負けずに自分が人でなしなのではと思っても
全力で縁を切らなければいけないのだ。
引っ越すという時が本当はその時だったのだろう。

フジじゃだめなのかと言われて
心揺れはしないけど重い気持ちになるのもそうだ。
自分が悪い気がしてしまうのがとても辛い。

彼らは彼らのかわいく幼い女の子じゃない私のことはいらない。
いらないなら手放してくれればいいのに、
理想の娘の姿を強要してくるのが辛いのだ。
親がそうだとストーカー並みにたちが悪い。

久保からの電話は予想通りでがっかりしてしまった。
無事かと何度も聞いたのに、巧妙に答えていないのがしんどい。

みかん様と呼ばれる人が、良いおじさんというのも
実際ありそうだ。
何かを悪くしようとして始める人はいない。
いや、中にはいるかもしれないが。
良かれと思って始めても、集団でいることで
いろんな人の思想が混じりだんだんズレていくのだ。
ままならないなぁと思う。

ひばりは脱出できたけれど、簡単に良かったとか
ハッピーエンドだとは言い難い物語だった。