武蔵と吉岡清十郎との戦いが終わり、
清十郎の遺体を前にした伝七郎が
思わず手で断面を塞ぐようにするシーンに思わず涙しました。

孤独に一人で生きる武蔵と正反対に、
父の名、流派、一門全てを背負って戦いに挑む伝七郎。

背負うものが余りに大きい吉岡一門としては、
先に武蔵を倒そうとした兄清十郎も、
武蔵と伝七郎を戦わせたくない弟子たちも
なんら間違いのない当然の行動だとも思います。

一方の武蔵は穏やかに、たまたま出会った本阿弥光悦の家で
試合の日までを過ごします。
そして離れには小次郎が世話になっているという状況。

清十郎を倒したのに嬉しいと思えない武蔵。
武蔵はひたすら強さを追い求めただけなのですが
吉岡一門との戦いはもう引き返せないところまで来てしまっています。

伝七郎は剣客として弱い訳ではないのですが、
命のやり取りをする、勝つ為にはどんな手でも使う
といった考えや覚悟がなく、
試合前の最後とも言える武蔵を倒す機会を逃すことになります。
正しさとはなんなのか、考えさせられました。