所謂イソ弁である新米弁護士が主人公。
真保先生らしい型にはまったキャラクターと展開。
主人公は他の作品に比べると行動力が無いとも言えるが、その分はヒロインが担っている。
内容は思った以上にシリアスで、ふっと力を抜けるようなところが無かった。
タイトルの意味がわかるとなんとも言えない気持ちになる。

ここからネタバレ。
信じていた人が実は敵ではないのか、というのはよくあるが
全部主人公本條の勇み足でさらけ出さなくても良い真実を
公衆の面前に晒してしまったという結果は苦いものがある。
彼に真実を伝えなかったのは仲間としては良くはないが
そうした結果を招いたあと事務所に戻ってくるようチャンスをくれる高階さんは
良い人だし味方でいてくれる限り頼もしい人だと思う。
一度は失敗したが、次に失敗しなければ良い。
テニスは一度サーブをミスしてももう一度打てる。2度目で失敗したら「ダブルフォールト」。
高階さん自身、若い頃の自分を見ているような気持ちなのだろう。

警察が弁護士じゃなければぞんいな態度を取るであるとか
こちらが被害者なのに明らかに面倒がって、訴えなきゃいいのに
という気持ちが透けて見える態度、など自分も嫌な経験があるので
思い出してちょっとイラッとしてしまった。
人は結局見た目や肩書で判断する。
弁護士だから信用できそう、というのもそうだし、
若い女性だから許してやれというのも意味がわからない.
世の中の正しくはないがよくある事実もさりげなくあちこちに散りばめられている。
たとえば本條のお母さんが息子の仕事を誇りに思うのは良いのだけれど
被害者の味方だと思っていて加害者の弁護をするなと考えているよな
好意なのだけれど無知で無茶を言ってくるところなど。

物語としてよく出来ているというか、型通りに流れていって面白みがあまりないと感じた。
うまいけれど笑えはしない漫才のような。
他の先生の作品のような、ワクワクしながらページを捲る感じは無かったし
誰も幸せになれないラストは寂しいものがある。
それがリアルといえばリアル。