カタシロRebuildの凄さ

何もかも全く知らず、なな湖さんとズズさんが出ると聞いて
じゃあ見てみよーって感じだったのですが
出演者さんは他にも豪華だし、
っていうかディズムさんとまだら牛さんじゃん、あれ、ハヤシさん…?
ってなって、CFしてたことも知らなくて
えー教えてよ振り込めない詐欺じゃんってなりました。
その分スパチャの形で振り込めるの、いいね…。
でも知って参加してワクワクしながら配信待ちたかったな。

CFの内容もすごく良かった。
目標は300万円だったのに、4400万円オーバーというのも納得だし
だからこそその分を豪華出演陣に打診し
舞台設備もきちんとしたものにすることで還元という姿勢も素晴らしい。

『カタシロ舞台化プロジェクト』 – クラウドファンディングCAMPFIRE

という訳でTRPGの内容も全く知らない初見です。

カタシロRebuildのすごいところは、兎に角構成だと思う。
主人公=プレイヤーが記憶喪失設定なので、分からないままでも
自然に物語に入り込めるし、
他の登場人物が説明をするのも不自然じゃない。
3日と始めに区切られて、徐々に情報が与えられるところや
思考実験として心理学の命題を3つ出してくるところも
前フリになっていてとてもおもしろかった。

 

物語についての感想(ネタバレあり)

1日目

知らない場所で目覚めて

TRPGの方も知らないもので、自分だったらこうするなぁと思いながら
ずっと見ていました。
雷に打たれてから何日たったのかと、体の損傷の程度をもっと聞きたい。
電紋が本当にあるか自分の体を確認すると思うし
そこまで重症だったわりには今元気なことに違和感がある。

あとは自分に治療費の支払い能力もあるのかないのか不安だ。

 

囚人のジレンマ

囚人のジレンマは知っていて、考えてみたこともある。
自分は黙秘を選ぶと思う。
その理由としては、相手を信じるか信じないかというのも
勿論あるのだけれど、相手のあることだから
いくら考えても本当に相手がどうするかまでは分からないので
そうなると、自分が後悔しない方を選びたいという観点で考えるしかない。

となった時に、相手は黙秘してくれたのに自分が自白してしまった、
だと後悔してもしきれないので
自分は自分に恥じない方を選ぶしかないと思うと黙秘なのだ。
それで刑期が伸びてしまったら正直悔しいけれど、
自分を恥じるような行いをするよりはましかなと考えるしかない。

 

部屋を見回して

工具が置いてあったら、脳外科なのかな、
頭蓋骨を外されたのかなという印象を持った。
想像力は旺盛なので、ことによると自分が機械かもしれないと
この時点で思うかもしれない。
ここに入院する人は記憶がない人ばかりという情報も怖いし、
急な眠気についても睡眠薬なり何かを疑って不安になってしまいそう。
そもそも手術室で寝泊まりするのは絶対嫌だ。苦笑

 

2日目

自分の身体への疑い

視界が歪んで雑音もするとなると、
単純に霞んでいたり耳鳴りがしたりの脳的な影響よりも、
自分はもはや自分でないのではないか、
アンドロイドなのではとこの辺りで思いそう。

 

テセウスの船

これも知っている。
自分が思い出すのは頭文字Dの拓海の言っていたこと。

愛車をエンジンブローさせてしまった時、
エンジンを積み替えたらそれはもう違う車なのではと思い悩んで
積替えを渋るシーンがあったのだが、
拓海が車に愛着を持っていてその愛着の持ち方がこの答えを出させるわけで。

例えば歴史的に重要なお寺があってずっと修復しながら何百年と経って、
初めの建物に使われていたパーツは入れ替わってもう今残っていないとしても、
そのお寺はやっぱりお寺であることに変わりはないし
大切に今まで残してきてこれからも残したいと言う意図から来るものだから、
それも含めて大切にするべきだと思う。

何をもってして存在意義とするのか、
何が何に対して愛着があるのかというところで
答えは変わってしまう命題だと思っている。

ちょっと話がそれるようだけれど、
日本橋の景観を守るために首都高速道路の高架橋を移設するのが
大変というのは同意するのだけれど、
だから日本橋の位置をずらせば良いというのは
個人的にはとんでもない間違いだと思っている。
日本橋はずっとそこにあったもので、単に先着順という意味でもそうだし、
それでなくともその場所にあるということが大事なのだ。
場所を変えてでも橋はそのまま移したのだし
名前も日本橋だからこれは日本橋ですと言われても、
移した時点でそれは日本橋の亡骸みたいなものだ。

認識する側がどこを重要視しているかで、
その部分を損なわないようにしていればそれはテセウスの船だと思う。

古いパーツを取っておいてそれで組んだ船もテセウスの船だと思う。
これは自分は刀で言う本歌とか写しみたいなものだと考える。
古い方の船も刀も実用にはおそらく向かないだろう。

創建2677年石切劔箭神社「刀剣奉納」プロジェクト
https://camp-fire.jp/projects/view/119435

というものがあったが、
これであればこの「太刀石切丸」は大変貴重なものであり、
奉納をすると神様の佩刀になるので二度と世の中に出すことができなくなるし、
重要美術品に認定されているので奉納することもできない。
だから復元して作刀したものを奉納刀とする、というCFだった。
この場合どちらも本物の石切丸と言える。

刀剣乱舞繋がりで言えば山姥切の話もこの件に近いと思う。
何をもってして本物というのかという話で
それは人により立場により答えが変わってくるものだとは思うが
やはり自分はどちらもテセウスの船でどちらも本物であると考える。

ただ先ほども書いたように歴史的なものを尊重するのであれば
古いパーツで作ったほうの船が『本物』であるし、
実際に乗ることができる船ということを重要視するのであれば
新しくなった船の方が『本物』であると思う。

 

拘束を解かれて

記憶を失うほどの大怪我をしてずっと手術室に寝かされていたのに
身軽に動けることも違和感をもってしまうのだけれど、
これはメタ的にはマコトがそうなだけで自分自身は問題がないのだから、
スルーしてしまう点かもしれない。

部屋の中を調べるなら徹底的に調べると思う。
引き出しは絶対全部開けるし、かなり事細かにチェックするだろう。
適正率という文字を見たらやっぱり嫌な予感がしてしまうだろうな。
自分が実験台になっているのではないかとその時点で疑い始めてしまう。
適正率の①と②があるのが謎だけれど、
心電図モニターのように見えるあのモニターは心電図にしては表示がおかしいし、
これが適正率の①と②なのではないかと思った。

自分以外にも入れ替わり立ち替わり患者が来ていて、
自分はレアケースで大抵の人は具合が悪くなるというのを聞くと、
自分もいつか急変するのではないか、しないのであれば
逆に自分はやはり人間ではないのではないかと考えてしまう。

多分誕生日も聞き出して棚を開けると思うし
銃を見つけたら恐らく隠し持っておくだろうが
普通の銃ではないのでどうしたらよいか使い所が分からない。

 

3日目

臓器くじ

似たような話は聞いたことがあるが、この名前のものは知らなかった。
どう感じるかと言われればやっぱり自分は怖いと思う。
これが例えばどこかの国で実際にあるとして、その国ではそれが普通で、
それに選ばれることは名誉なことであり
本人が喜んで死んでいくというのならまた話は少し違ってくるかもしれないが。

トロッコ問題にも近いものがあるかもしれない。
誰かを救おうとすることが誰かを見殺しにすることになってしまう。

小説『塩狩峠』の元になった事故について、
自分は学生の時聖書の時間で習ったことがある。
聖書の時間で取り上げただけに、先生は目をキラキラさせながら
自己犠牲の美しさを熱く語っていたのだが
それもあって余計に良い話には思えなかった。

トロッコもそうなのだが実際はどちらを轢くかだけでなく
もっと選択肢があるはずで、
自分の身をなげうってもそれで列車が確実に止まるかもわからないし
自分だったら到底判断はできないと思ってしまうが
その場にいなかった人間に決して批判をすることはできないと思う。
もっとやりようがあったのではというのも結果論であって
実際には他に方法はないのかもしれない。

ただ自分は自分の命が大事だし、自分が籤に選ばれることを考えると恐ろしい。
自分が病気になって臓器移植が必要だとなったとしても、
残念な事故で生前臓器移植に賛成している人から貰えるなら
大変ありがたく感謝すると思うけれど、
いやいや籤で選ばれて泣き叫びながら殺された人の臓器を
移植してもらうこと嬉しいと思えるとは思えないのだ。
それくらいなら寿命だったと思って死を受け入れた方が
ましなような気がしてしまう。

富の再分配の話も出ていたが、
命についてはやはり取り返しがつかないものなので
単純に利益として割り切ることはできないと思う。

 

鍵が開いたままの部屋

鍵をかけずに出て行ったと言われたら、脱出することを考えるな。
これまでにもっと相手のことを信用できるような情報を
引き出す会話をすると思うし、
引き出した上で信用できないと思ったらとりあえずまず逃げる。

 

真実を知って

まずもう、魍魎の匣じゃんってなった。

自分が気になったのはまず雷に打たれたというのが
本当なのかどうかというところだ。
事故にあったことは本当で、この病院に運び込まれて
たまたま治療ついでの実験結果として適正率が高かったというのだったら
まだしも話を聞く気になるのだけれど。
元の体に戻せるとは言え、健康なのを捕まえてきて
断りもなく移し替えたということならば
もうその時点で全てが信用できないわけだから
やっぱりとにかく逃げようと思ってしまう。
アユムに対して多少の好感を抱いていたとしてもそれはもうもはや別問題で
まずは身の安全を確保して事実を見極めてできれば味方も欲しいところ。

信頼関係がある程度できた状態で体をアユムにくれないかと言われたとして、
臓器くじの時にも言っていたけれどいくら適正率が高いからといって
確実に成功するのかという問題があるし、
成功したとしてアユムは素の自分の顔や年齢や場合によっては
性別すら違ってしまう体を得ることに同意しているのかが気になる。

更に自分の機械の体がどれほど使えるのかという点もやはり気になる。
メンテナンスをしてもらえるのか。
日常生活を送れると簡単に言うけれど、たとえば人前で転んで擦りむいたら
皮膚の下の機械が丸見えになって大騒ぎなんてことになっても困るわけだし。
かといって元に戻せると簡単に言われてもそれはそれで信用できない気がする。
ここに至る前に既に騙されていたのだとしたら、信じられない反面
わざわざ三日間かけて調整をして説得をしようというのだから
初めから体を騙し取ろうというのだったら
こんな余計なことはしなくても良かったわけだし。
結局その辺りでぐるぐる悩んでしまうと思う。

とは言え、どういう経緯を辿っても最終的には譲ることになると思う。

  

プレイングについての感想

どの回も当然面白かったのだけれど、特にお気に入りは
名越さん、ズズさん、なな湖さんの回。


名越さんの回は普通に勉強になるし会話が聞いていて面白かった。
楽しんで参加してくださっている感じなのも良かったし、
全て分かった上でラストを迎えている感じや、
カウンセリング的な見地から治療を申し出るところが凄い。

ズズさんとなな湖さんはゲーム実況者だけあって
ロールプレイもきちんとした上で、
目に見えたものや自分の考えたことを全部言葉にしてくれるところが
流石だなと思った。
なな湖さんがちゃんとスリッパを脱いで横たわるところと、
部屋をちゃんと調べて、棚の下!って
滑るようにして見てるところが可愛かった。笑

お二人共アユムを見て動揺しながらも
アユムの前ではごまかそうとするところが優しい。

なな湖さんがアユムじゃなくて自分の体だと言われて
思わず駆け寄るところがすごく良かった。
体をアユムにくれないかと言われて第一声
「それをアユムちゃんは知っているんですか」だったのがすごく驚いた。
まずそこなんだ、というのが個人的に本当にびっくりで。

アユムは知らないっていう答えを得てアユムに話しかけるところが
もう最高に泣いた。
「アユムちゃんのこと考えてない」とお医者さんに詰め寄るところも。
9歳だから言ってもわからないというのも結局親のエゴで、
それを指摘したところが兎に角恰好良い。
確かにアユムが望んでないのに勝手にそんなことをして
アユムが業を背負ってしまうというのもきついところで。
誰も幸せになれないことになってしまう。

「お父さんと作戦会議をしたんだ」って
明るく話し始めるところもとても良かった。
本当に、子供が好きな少年漫画を書いているヒーローっていう感じだ。
双子だと思われちゃうかも、スカート一緒に穿くって言うのが
なな湖さんらしいなと思った。
お父さんの口から説明させて、アユムに決めさせないと駄目だって
言うのが本当に恰好良い。すごく熱かった。
言われるがままでもなければ拒絶するのでもなくて、
本当に幸せになれる方法を考えていると思う。
それは確かに『利益』を考えていて、これまでの議論とも矛盾していない元通りの生活に戻れるとのだと思う。

「おれはいいよ、アユムちゃんがどうしたいか決めて」
って言ってあげてるだけで、マコトとしては譲るつもりなんだろうなと思える。
それでも最後はお父さんが決めるべき、と
医者に決めさせようとするのも強かった。
対等に意見を戦わせて、なんならお父さんを詰めていたくらいなのが良い。

機械の体の寿命はどうなるのか。
3年は大丈夫、って答えのときもあったし回によって違って
多分明確な答えは無さそう。命はいつ尽きるのか。
正直、疲れや痛みをコントロールできるなら機械の体の方が良いまであると思う。

進撃の巨人的な人気漫画を亜城木夢叶的に連載中だったなな湖さんが演じるマコト。
「妙な三日間だったけど面白い漫画のネタになるぞ」
という締めもすごく良かった。

 

ズズさんが臓器くじの会話を思い出しながらすぐに察して
「つまりそれが僕?」と言ったのがまるで台詞みたいに綺麗。
突きつけられた真実に、

「なんだそんなことかよ」なのがまた最高だった。

選択肢がアユムちゃんにはそれしかなくて
自分は機械の体でも生きられるなら、ある意味選択肢はない。
譲る一択。

ズズさんが演じるマコトは、
漫画家を目指そうと思うほど少年漫画が好きだった、と。

その理由が、自分が弱虫だったから、ヒーローになりたかった。
誰かを救うことができたらってずっと思ってきた。やっと人を救うことができる。
自分に勇気を与えてくれた。アユムちゃんを助けてあげて。
恰好よく気障に言うのじゃなくて、泣きながらがむしゃらに言うのが
もらい泣きしてしまった。
お医者さんにも「臓器くじはよくないことだって言ったのに?」
と言われても、「関係ない」と。
感情的で凄く熱いマコトだった。

アユムとの会話であまりにごめんというから、
ごめんじゃなくてありがとうって言うの、とアユムに言われていたマコト。
「本当に優しい人だ、ありがとう」とお父さんに言われて
「ありがとう」と返すところが素晴らしい。
「おれでもできるんだとおもった、アユムちゃんありがとう」
ズズさんの回の終わり方もとても綺麗だった。

 

多分この3人のマコトは、アユムとお父さんと
機械の体のメンテナンスが無くてもずっと関係を続けていくんだと思う。

素敵な創作とプレイングに触れることができて良かった。
中身を知ってしまったので自分でロールプレイするのは無理だけれど
TRPGの方のカタシロもなにかの形でやってみたいと思う。