前情報を全く入れずに読んだので、タイトルの意味が分かったときには驚いた。

見取り図があったり、多くの手がかりについて
きっちりさらっと言及されており
読者が仕掛けに気付くことができるフェアな作りは
昨今のミステリと銘打ちながら混沌とさせるだけさせて
展開していくパターンとは一線を画しており
本来のミステリとはこういうものであると思って
大変嬉しく気持ちよく読んだ。

人物の会話などにはラノベを思わせる読みやすさもあるし
ミステリを研究して書かれたというだけあって
仕組みが面白い。
映画好きな人が映画を語るというメタに近い謎解きの手がかり描写も自分としては面白かった。

ここからは物語の大きなネタバレを含むが

ゾンビを出した理由として、目新しいし面白そうだから出したのではなく
『壁ではない別のもので成立する密室』を書こうとした
という解説を読んで膝を打った。

この点、パニックホラーを期待して読んだ方が
食い足りないと感じる気持ちはそれはそれで分かる。
パニックホラーとしては迫力に欠けるし
そこまでピンチにもならない。

飽く迄も壁や鍵ではないゾンビによる密室
というのが面白みだと思う。

明智のキャラは好きになりそうだったのに
退場してしまうとは思わず残念ではある。
比留子の理由付けについては多少思うところはあるが
シリーズのようなので続きを読むことで
納得できることもあるかもしれないと思っている。