ネタバレあり

最初に読み始めたときは、正直さらさの奔放なキャラについていけないところがあったのだが
途中から俄然惹き込まれてしまった。
今こうして読み返すと、さらさの魅力の面しか目に入ってこない。

授業の方針で国広先生と安藤先生が対立するが、
退屈な思いをさせてそれが放たれた時情熱になる
という国広先生の考え方は自分も意味が無いしナンセンスだと思う。
これはこの先のネタバレをやや含むが

国広先生が子供の頃、紅華に憧れたのに
「あそこは女性しか入団できない」と言われて
ショックを受けたことを聞いているさらさ、
自分も同じ思いをしていただけに感情移入したのだろう。
トップの櫻岡みやじが、国広先生が台本をくれと頼んだ時
あっさり頼みを聞き、サインまでしてくれて
「こっちに来るのを待っているよ」と言うところが恰好良い。
実際宝塚でもこれに近しいエピソードを持つ先生がいらっしゃるようだ。

この会話から、演技の授業で実技もしたいといい出したのは生徒からで
それを安藤先生が敢えて言わなかったことを国広先生が知るのが良い。
身長が高く目立つさらさがバランスを保って舞台に立てる場所はセンター、という言葉が良かった。
トップにもらった台本は空襲で燃えてしまったが、
「何時の世も人々には夢が必要だ」
「皆がそう望むなら私達は何度でも蘇るだろう」
というトップの言葉も素敵。

友達が喜ぶと自分も嬉しくなると知った、という愛ちゃんが可愛い。

星野さん、おばあさんもお母さんも紅華女優というのは、
プライドもあるしプレッシャーもきつそうだ。
愛ちゃんが、アイドルの仕事が忙しくてろくに学校へ行っていないから、漢字が読めないと告白し
星野さんに引っ張ってもらわないと、と励ますのが良い。

歌舞伎では自分の個性ではなく代々口伝されたものを引き継いでいくのが正しく、
そのやり方ではさらさの個性が当然出ず、紅華でトップを目指すのにはそぐわない。
なるほどなぁと思った。
さらさがここからどうやって自分の芝居を見つけていくのか、とても楽しみだ。