起承転結、エピソードの強弱がはっきりしている。初代版の良さを失わず、現代向きにより劇的にアレンジされていてとても好感がもてる。劇場公開時良い噂しか聞かなかったが、なるほど頷けた。

以降ネタバレ含む。



冒頭に満月牧師と美夜子らのシーンや、中途に悪役のシーンを挿入し、不安を煽る構成。
ドラえもんの石像も屋根をぶちやぶって落ちてくるとはかなりインパクト大。のび太くんの石像が空き地にあることをしずかちゃんがいいにくるのは一見不自然だが、それにより問題なく主要キャラ5人の紹介にもなっているところが心憎い。
この石像については、形が変わっていることについて「柔らかい石なんだ」とか初代版ではあまりに不自然だった台詞が変更されている。雨の中庭に出すよりもドラえもんのポケットの中に入れる方が自然だし、腹痛を起こして未来へ一度帰ることで後々ドラミちゃんが心配する伏線にもなっている。
魔法世界になってから喧嘩したふたりが、「石になれ」とかかりもしない魔法をかけ合おうとするのはシャレが効いている。
美夜子のママのエピソードはオリジナル設定だが、より感動的にしあがり面白い設定だったと思う。
満月博士が満月牧師と呼ばれるのは少し慣れなかったが、無理がある設定ではない。
五人がのび太くんの家に揃ったときはつい感動してしまった。
偽物の美夜子とのやりとりも冒険活劇らしいシーンで思わず引き込まれてしまう。
本物の美夜子がねずみの姿にされているというのも、初めから猫なのよりも、ドラえもんが嫌がって気付くのが遅くなるというのも不自然さがなくなるし、中々魔法を使う出番がないしずかちゃんたちの腕のみせどころにもなる。魔法世界の小学生らしく、遊び心があって良い。
悪役の手下の正体が美夜子の母、とすることで、物語はより感動的になるし、魔王の心臓のありかも母の口から語られることになる。美夜子がしずかちゃんに、髪をのばしてみる、と話すシーンも、しずちゃんと絨毯の中で話していたシーンとつながり、女同士の会話として心温まるつくりになっている。
個人的には、やはり違う世界から来たのね、とのび太くんと会話するシーンが好きだったのでそれが無いのは残念だったが、この展開も非常にあり。
最後に夢だったのかも、として、魔法が使えたのも「まさかね」とのび太に言わせながら、駄目押しで箒が樹上にあるのも良い演出。

初代版が好きな人間でも満足のいくリメイクだろう。