非常に長い話だった。単純にページ数が多いというよりも、正直に言えば読み飽きてしまうせいで感じるのだと思う。
だが、人一人の人生を丁寧に第三者の視点から描き挙げた物語なのだから、時に冗長になっても当たり前だと思った。
オウエンの運命を読者は中途で察するのだが、それでもラストはまったくひたすら圧倒される。

精巧にきっちりと作り込まれた伏線の回収、というよりは、無駄なことなどこの世にはなにひとつない神の思し召しによって
パズルのピースが次々と嵌っていくようなすべてが集約されていくある種の爽快感がある。

オウエンがジョンに諭した”ちょっとした勇気”の凄まじさ。
オウエンの言うことに従うジョンは勿論のこと、それを決行しようとするオウエンの決意の凄まじさ。決断はけして軽く行われたものではなく、彼自身どれだけ苦しんだ末だったのか。

また、空港で己の”預言”を信じ疑うオウエンに、歳相応の普通の人間としての迷いに泣きたくなった。
死なずに済むなら死にたくない、という痛ましいほどの悲しみ。しかしそれが定めでどうしようもないと悟り行動に移す冷静さ。
それは正に磔になることを嘆き神に問い、真っ直ぐに受け入れて命を落とし
後に復活したイエス・キリストである。

また、本書では太字のゴシックで表されるオウエンの台詞だが、原書では全て大文字なのだという。
彼の”ヴォイス”がここにあるのだ。
原書で読めばより一層彼の言葉を感じられるかもしれないと思った。

そして、オウエンを見届け彼のために祈るジョンの、
友情という簡単な一言で言い表すには抵抗を覚えるほどの感情の緩やかさと激しさを見る。

章タイトルもあまりに秀逸である。