五代将軍・徳川綱吉の時代。 松姫を亡くした綱吉の姿があまりにも気の毒であり、 また忠臣蔵の書き換え方が非常に興味深い巻だった。 男女逆転といってもただ性別を交換しているだけではなく それぞれがその性別であるところにきちんと意味があるのが 物語に深みを与えていると思う。 生類憐れみの令自体は、学校で学んだときには愚策と思ったが あとで個人的に勉強したときにそうとも言い切れない面も あったことを知ったので、 更に年老いた父の為に娘が敷いた令と思うと切ないものがあった。 永光院と桂昌院の再会のくだりも 天下人の父親である桂昌院が、有功の前では 若い頃の玉栄に戻ってすがるところが泣ける。 吉宗の利発な描写も良い。