二人の人間の体と心が入れ替わってしまい、戻り方が分からない。
これだけ聞けばよくある設定だと思うかもしれないが、
ひりひりするような厳しいリアリティと繊細な感情表現により
全く新しい切り口の物語になっている。

何故か入れ替わってしまった後、女子高生の小田薪葉菜になった
中年男性の木根正吾は姿をくらましてしまう。
一年後に再会するのだが、中年男性になってしまった葉菜は、
記憶も身よりも無く悲惨な一年を過ごしていた。
一方正吾は読モになってうまくやっている気になっているが、
実はそうでもない自分に気がついていて鬱屈している。

正吾は葉菜を自分のコネで読モをしている雑誌の事務所に
雑用係としてねじ込む程度の世話はしてくれるものの、
正吾が葉菜の体を使ってやりたい放題する様は
シンプルに気持ち悪いし不愉快だ。
だが、積み重ねたものが奪われたのは自分だけではない、
と葉菜が気がつくシーンではこちらも辛い気持ちにさせられる。
記憶喪失になり職を失った正吾を尚心配してくれる
元同僚たちがいて、何もわからない姿にふと男泣きするコマを見ると
本来の正吾だって空っぽではなかったのではないかと思うのだ。

正吾は葉菜のことを、空っぽの人生を送っていた、自分の方がうまくやれる
実際うまくやっている、と思い込もうとするが、
葉菜が周囲の協力もありおじさんとしてでも一生懸命生きようとする姿が
疎ましく羨ましくもあり。

ヤマシタ先生のことなので、もとに戻ってハッピーエンドになるか怪しいところ。
続きも読んでみようと思う。