ネタバレあり

「レンタル世界」と「ままならないから私とあなた」の2編。

レンタル世界は言いたいことはわかるのだが、
既婚者なのに風俗を利用したり浮気したりというのがどうしても受け付けない。

表題作は、薫と雪子が仲良しで微笑ましいのに、時々薫の発言でぞわっとさせられる。
自分は合理主義なところがあるし、デジタルを頑なに使わない人のせいで
使う人たちが迷惑を被ることが腹立たしい
(たとえばスマホを持たない主義の人を掴まえる為に、LINEで1分もしないやり取りが出来ず
着替えて電車で移動してその人の家までこちらが訪ねなければならない、というのが苦痛)
と思うクチなので薫の言っていることはわかる。
「自分にとって都合のいい新技術とか合理性だけ受け入れて、
自分の人生を否定される予感のするものは全部まとめて突っぱねるって、ずるくない?」
というのも頷ける。
過程が大事なら歩いて移動すれば?というのは辛辣に聞こえるが、全くそのとおりだ。
時間と手間をかけて歩いている間に気づくことは実際あるかもしれない。
それと、手間暇かけて物を作り出すことの大事さ、無駄さはどこに差があるのか。

反面、雪子が苦労して生み出した創作物と
薫の創作物から生み出された仮想雪子の生み出すものに違いがないというのは
雪子の立場からしたらあまりにもきついし、全てを台無しにされたと感じるのも無理ない。

たとえば、電子書籍は便利だけれど時には紙の本をめくりたいときもあるし
後世に残すなら現時点ではデジタルよりも和紙に墨の方がまだ確率が高いといったことを
ケース・バイ・ケースでそれぞれに考えていくしか無いのだと思う。
無駄なことが楽しいこともあるし、コストやタイムパフォーマンを重視するべきだとも思うし
薫にはずるいと言われてしまうかもしれないが、結局はバランスだし
何を選び取るかは自分が決めるしかないのだろう。