ネタバレあり

さらさの中のティボルト、と先生にいわれたことを反芻するさらさ。
スタンド? うなじの中? とおたくな悩み方をしているのが楽しい。笑
新幹線で偶然トップ様たちと乗り合わせて会話できるの、ちょっとすごい。
話したらみんなに羨ましがられそうだ。
仲良し、とドヤる愛ちゃんがとってもキュート。

さらさの家がにぎやかなのを、都会っ子的に嫌がるのではなくて
「昭和のドラマみたいで楽しい」と言う愛ちゃん。
愛ちゃんを置いて一人おばあちゃんのお墓参りに行くさらさが
「なれない」なんて断言されると気が弱くなる
呪いの言葉ですよ、とお墓の前で言っているのが寂しい気持ちになった。
思った以上に深刻に悩んでいる気がして心配だ。

初めての友達のさらさを心配する余り暁也に不躾な質問をぶつける愛ちゃんも
答えられる範囲で応える暁也くんも良い人だ。

幼い暁也の母が、息子が褒めるさらさのことを
「でも女の子じゃない?」と返すの、
確かにそれは事実なのだがまず母として良くない対応だ。
父親が歌舞伎が嫌ならいつでも辞めていい、と言うだけまだ救いがあるけれど
母親は明らかに息子を身代わりにして、自分の夢を子供に叶えさせようとしており
子供が歌舞伎をやりたいのかどうかや、友達としてさらさをすごいと思っていることなどはどうでも良いところがキツイ。
さらさが男の子だったらね、と大人が話しているのを耳にしてしまったらそれは落ち込むに決まっている。
黒い気持ちが生まれても仕方ないし、それが思わぬ方へ作用してさらさちゃんが泣くことになるのは
暁也にとっても辛い記憶でしかなかろう。
助六にはなれないとさらさに言い放った後、大人がしゃがみこんでショックを受けている姿、
大人が怒鳴り、頭を下げている姿を見るのも、
幼い彼には衝撃だったはずだ。

自分のせいだ、と言う暁也への、おじいちゃんの対応がとても優しい。
ぷち家出に対して、お母さんが反省した、宏のやりたいことをやろうね、と言ってくれると思わなくて、温かい気持ちになった。
そして歌舞伎が好きだという自分の気持ちに気がつき、その道を進もうと決意する景色が美しい。

愛ちゃんがさらさの後押しをするように
「助六を見てみたい。私を歌舞伎へ連れて行って」
と言ってくれる優しい笑顔が素敵だった。
さらさちゃん、愛ちゃんの為にイヤホンガイドを借りてあげてほしかった。笑
さらさが何故泣いていたのかわからないけれど
歌舞伎を見に来たことを後悔していなければいいな
と考える愛ちゃんが本当に優しい。
新幹線のホームで気を使って席を外すところもキュートだったし、
新幹線の中でいまエスパーな気がするという前置きをして
「もう花道を歩けなくても、私達には「銀橋」があるよ」
と真っ赤になりながら言う愛ちゃん、
笑顔になってはい、と言うさらさちゃん、どちらも愛おしい。

別れ際の暁也の
「目指すものが解っているなら進むだけ。進むべき道は一本しかないんだから」
という台詞、悩みながら進んできた暁也の言葉だけに、とても響いた。