楽しみにしていた芝居が全て中止に

自分は、芝居が好きだ。
学生時代には何年も真剣に打ち込んていたし、
家庭の事情が無ければ役者の道に進むつもりだった。

今は演じる機会を貰えることもなくなり
見るばかりではあるものの、芝居が好きなことに変わりはない。

行きたい芝居を片っ端からチケットを取って
チケットホルダーに溜めていた。
が、このコロナ禍で軒並み芝居が中止になった。

単純に自分の楽しみが無くなったというだけでなく
演劇界の今、そして今後を思うと鬱々としてしまう。

 

自粛要請自体は仕方ない

宮本亜門氏 エンタメ業界への支援不足に苦言「不要のような感じがしてしまう」
https://www.tokyo-sports.co.jp/entame/news/1839951/

不要と言われて悔しい気持ちはわかる。
反面、やはり衣食住などに比べて優先順位が下として扱われるのは仕方ないとも思う。

自分自身エンタメ業界にいて今仕事がほぼ0の状態だ。
演劇業界だけが辛い訳でもない。

自分の感覚はこれに近いと思う。
舞台でなくとも、芝居自体は出来るとも思う訳で。


芝居をネット配信するというやり方

録画映像の配信

以前上演した舞台の映像を、無料または有料で配信する試みは、You TubeやDMMなど色々なサイトで行われている。
以前からされていたが、コロナ禍で今まで利用していなかった人も利用するようになった印象だ。

更に、コロナ禍になってからリモートで撮影したものを配信するYouTuberも増えてきた。

ビデオチャットでオンライン飲み会という状況での会話劇も配信している団体もある。

生で演劇を配信する

先日、うち劇を見た。

ネット配信舞台 うち劇https://uchigeki.spwn.jp/events

役者はリモート出演だが生で演技する。
衣装や小道具もあり、SEやBGM、BGも合成されて
思った以上にきちんと舞台で、楽しめた。
生配信なのでカクついたりスタッフの声が入ったり
と、まだ新しい試みで熟れていないところはあるが
ポスト・コロナまでの繋ぎとしては十二分だと感じた。

台本や小道具は各役者の家に郵送し、
打ち合わせや読み合わせ、稽古はビデオチャットで出来るわけだ。

 

自粛とはどこまで、いつまで必要なのか

配信する為に集まるのはNGなのか?

ただ、うち劇を見ていて気になったことがある。
てっきり役者は個人宅でやっているのかと思ったが
どうもアフタートークを聞いているとそうではないようだ。
「(この後)家に帰ったら」という類の発言が何度かあった。
ITに強い人ばかりとは限らないから、貸会議室などどこかにスタッフと役者が集合して配信したのだろうか。

「この劇で初めて共演した、まだ実際に顔を合わせたことがない」
という発言もあったが、Twitterでは本番前というタグ付きで一緒に撮った写真も投稿された。

ということは、役者はもしかしたら一箇所に集まっていたが、一人ずつ個室なりに入ってソーシャルディスタンスを守りつつ
演技をしていたということなのかもしれない。

オープンにしたら炎上する可能性もあると考えていたのかもしれないが、隠すなら隠すで徹底した方が良かったのではという気がする。

 

何人までなら集まって良いのか

仮に一箇所に集まってやっていたのだとしたら、
芝居の前後には通常通り顔を突き合わせていたのに
芝居の間だけわざわざ離れたことになる。

一箇所に集まれるなら、リモートでの朗読劇でなくても
通常のように立ち稽古状態でやったものを
単に生配信しても良かったのではと思ってしまう。

それは今の世論では許されない行為なのだろうか。

それとも少人数で、離れて演技をすれば許されるのだろうか。

 

無観客での上演ではなぜいけないのか

ライブハウスなどは、無観客でライブをしてその様子を配信するという試みもあり
その場合でも、休業中と見做され補償の対象になる。

舞台でも、たとえばFF BEミュは無観客で一度だけ上演し
その様子を配信、収録をDVD発売する。

配信のノウハウを持っている劇団ばかりではないだろうが
逆に質に拘らなければスマートフォン1台で誰でも配信はできる。

予定の全期間中会場を借りるコストも勿体無いし
自前の稽古場があるかないかなどでも差はあるだろうが
中止ではなく無観客で上演して有料配信の方向は考えられないのだろうか。

キャスト間で感染拡大するのは大変怖いところだが
ではなぜ一部では無観客であればOKという風潮なのだろうか。

実際はOKとは言え嫌がらせを受けているライブハウスや飲食店も多いという話も聞く。

演劇も無観客上映をすれば風当たりが強くなるのだろうか。

 

演劇は再開できるのか

自粛が言い出されたのは3月だ。
始まったばかりの頃は上演をしている劇団も多かったが
今は中止が当然の流れだ。
そしてもう、5月である。

完全に『終息』するにはまだまだ時間がかかるだろう。
『収束』すれば芝居は再開できるのか。
3月下旬程度の、客はマスクをしていて熱が無ければOKという状況になりうるのか。

無観客なら良いとして、
スタッフやキャストなど多人数が関わる大きな芝居でも制限はないのか。
無観客で元が取れるようにするには縮小するなり
通常のチケットと同じ金額で配信するなりするしかないだろう。

 

ゴールが見えない戦い

多くの分野で多くの人が言っていることだが、現在の自粛は
ゴールが見えない。
どうなれば良いのか、ビジョンが見えない。
ゴールとして明確なビジョンは政府が出してくれることが望ましいとは思うのだが
それは今の所無さそうだ。

ゴールの見えないマラソンで、給水は遅いし少ない

正にその通りだと思う。

舞台をなんとかネットで配信していくとしても
この事態になって浮き彫りになったが
誰もが満足なネット環境がある訳でもない。
この問題は例えば学校の授業についても言えることで、
大学ならまだしも義務教育もネットに頼る場合、
インターネットも水光熱と同様に重要なインフラとして
原則各戸に整備するのが当たり前になるだろう。

ゴールが見えないなら尚の事、時間がない、すぐにはできない
ではなくて実現していかねばならない。

武士は拙速を尊ぶではないが、兎に角速さが重要なわけで。

政府は、何もしてくれないわけではないが、取り敢えず遅い。

どうすれば自分のいる業界を含めてエンタメは生き残れるのか。
決定権のある人間ほど腰が重く、新しいことに手を出してくれない中で
自分自身が個人でできることはどれだけあるだろうかと考える日々。