高校の時文化祭で一緒にオオルリのタペストリーを空き缶で作った仲間たちが
40代になった今それぞれの事情を抱えつつも再会し
再び天文台を作るという一つの目標のために協力し合う物語。

あとがきにあった通り、最先端の機会がなくても研究ができるという事実は素晴らしい。
それに感銘を受けてこの物語を書いたそうだが
この小説では研究をする前の段階でお話は終わっているし
なぜ自殺をしたのか、なぜ引きこもりになったのか、
どうやって家業を立て直すのかなどの各キャラクターのエピソードは
薄く感じ、感情移入できるキャラクターは一人もいなかった。
ご都合主義に話が展開しすぎる印象もあった。

自分だったらこっそりアンテナを立ててミニFM局始めようとしているのに
自殺しようとしていると勘違いされ、リスナーを装ってコメントをされたり
家に押しかけてきて前の会社の人に事情を聞いたと言われたりしたら
なお一層引きこもると思う。

人間というのは、甘えている相手のことを親身になって考えたりはしない
というのはその通りだなと思ったし
千佳のエピソードに出てきた教育実習生の益井は唯一人間味があって好きだと思えた。
問題があるならやめさせるではなく、それをクリアさせるのが教育だ、という考えを
今も教師になって持ち続けてくれていたらいいなと思う。