平和な演劇部の光景からまさかの事故発生に衝撃。
当事者であるタオと同じくらい動揺していた
ビルとアオバがそれでも草食は離れて、落ち着けタオ
と声掛けをしているところが偉すぎる。
キビが今肉食に触られたくないと思う気持ちは無理もない。
それに肉食が、仕方ないと思いつつ傷つくのもまた当たり前だ。

力のある肉食獣というが、大型なら草食でもキビを運べるのではないのだろうかなどと思ったが。
せめてレゴシなら、とキビが妥協してくれるところが興味深かった。
腕も持ってきてと指示を出したり
お見舞い行くよ、退院したらアリシェイク飲みに行こう
と声掛けをできたりする冷静なレゴシ。

普段から力を意思で抑えて気をつけているのは
肉食獣も可哀想だし、タオも気の毒だ。
これ以上怖がらせないように、疑われないように
必死に冷静に振る舞おうとしても無理。
冷静だったレゴシとリズの方が不自然、というビルの台詞からの
「あの日テムを食ったのお前だよね」の展開は見事としか言いようがない。

一触即発の所へピナが登場するのだが
その登場の仕方もまた意外。
関係ないこととも言ってられないから自ら巻き添え食らいに来た、という台詞が肝が座っている。
肉食獣の理性を崩すのも保たせるのも草食獣という言葉に説得力があった。
「厄介な状況なのはお互い様だけど…
ひとまず今日は正義の勝ちだね。安眠できない夜を過ごしてろよ」
というピナの捨て台詞が凄い。
ガラにもなく熱くなって、レゴシを助ける為に割って入ったピナ。
借りができた、君の身は俺が守るというレゴシ。
どっちもとても恰好良い。

犯人が明かされてから読み返すと、きっちりリズは
コマの端々に描き込まれている。
ミステリーの鉄則、犯人は物語の序盤に登場していなければならないをちゃんとクリアしているのが良い。

ゴウヒンさんの病院が表社会の病院とちゃんと繋がっているのは少し驚いた。
理に適っているし、確かに美談だ。
そのバイト代を仕送りする名目で、五年ぶりにおじいちゃんに連絡を取るレゴシ。
側にちゃんといてくれて、背中を押してくれるジャックは本当に親友なのだな。

再会したルイ先輩にぶんぶん尻尾を振りながら抱きつくレゴシのシーンは泣けた。
偽名のハルオは、ハルちゃんから取ったのだろうか。
ふたりの再会と決別の話のタイトルが『ないものねだり狂想曲』なのも考えさせられる。
お互いがお互いの力を尊敬し羨み、光の下で生きて欲しいと思っている。

薬で力を抑える話は副作用も辛そうで気の毒だし
リズとテムが友達だったのもまた悲しい。
リズが過信して薬を飲むのをやめさえしなければ
違った未来があっただろうに。

ビルが肉食の自分は意見を言ってはいけない、
陽キャラらしく振る舞わないとと考えているのが
気の毒だし、エルスがとても良い子だ。
ビルの良いところも悪いところもちゃんと見ていてくれたのが素敵だ。

学園新聞に
正しい選択はどれだろうか?考え続けよ。ただし割り切ない。それは大人のすること。
と書いてあるのが良かった。

ジュノは別学でいいのにと思うところも、その理由が
肉食獣は草食獣にかなわないからというのも興味深い。
ハルとのやり取りが微笑ましかった。

社会に出たら一緒に暮らすのに、学生時代に別学にしたところで
御為ごかしだなと思う。