大店にありがちなのは仕入れが全てで販売が二の次、
結果流行遅れの高級品が大量在庫となる
というのが、成る程と思った。
流行遅れ、というところが厳しい。

牛島さんはどういう立場の人なのだろうと初めは思ったが
筋が通っていて良い人だ。
今の状況でも大番頭として残ってくれているだけある。
鷹頭を話した時に、「三郎坊っちゃんを裏切るようなことをすれば容赦しない」と言うところが恰好良かった。

虎三郎が立場に胡座をかくこともなく勉強熱心なところが非常に良い。
過去の帳簿を一生懸命読んで、五百雀が番頭になってから赤字が減っていることに気づき、
兄がやり方を間違えたのかもしれないと話すところも良かった。

つるさんが経験者なところ、時子さんとしては焦るところだろう。
男性陣から不条理な扱いをされているのに、自分から仕事を取ろうと努力しているところがとても偉い。
自分ならまず男性陣にキレそうだ。
実家の傘のお直しの時の経験という、時子さんにも活かせることがあったのが素晴らしいし、
だから行けると言い出せるところが何より凄い。

日本橋開橋にあたり、店と自分の名前で寄付をしていた存寅。
お金がないのに、と思う虎三郎に、鷹頭が
「お前の兄は間違っていなかった」と言ってくれるところが良かった。
確かに目先のことだけ考えればどこにそんな余裕があるのか、ということにもなろうが
絶好の商機であり、借金をしてでも寄付が必要だった。
兄のお蔭で今起死回生の一手を虎三郎たちが打てるのだ。

時子さん、立花様に気に入ってもらえて、頑張ったなと思う。
それにしても立花様=女は怖い、と言うのは女に甘い、というのはなんだか矛盾しているし、
時子を女としか呼ばない上、立花様が希望したことなのに
時子に「屋敷番は番頭の仕事だ、図々しい」と怒るところ、本当に男はプライドばかり高くて仕事ができないと思ってしまう。
小物を仕入れて在庫にしている癖売ろうとしない方が可笑しいし、時子の方が正しい。

鷹頭が時子を庇わなかった理由を、自分の方が嫌われているから自分が庇ったところですぐ沈む、自力で泳げ
と言っているところが、言い方は兎も角として
嘘がなくて信用できる。

英国時代のエピソードの中で、
国の都合で決まったことで職人が振り回され、しかも報われないことが多く、
細かい装飾や地味に見える技法に意味があるのに
理解しておらず伝えもせず売れないと文句ばかり言う
というのは現代においてもあるあるだなぁと苦々しく思ったし、
説明不足で買い叩かれることが多い日本の細工物を
虎三郎さんがうまくやればなんとかすることができる
という会話が良かった。
こうやって二人がそれぞれの持ち味でうまくやってきたのだなと実感する。

古い考えで不良在庫だけ増やして出ていった番頭たち、
その在庫が売れたらそれはいろんな面ですっきりすると思う。
五百雀が鷹頭のことを、「あなたのことを知らないし信用もしていない」と言った時に、
鷹頭が「俺もお前のことは知らないし信用もできないが、虎が決めた以上それに従う」と返すところ
考え方がはっきりしていて気持ち良い。
虎三郎が五百雀にお金の管理を任せると決める
つまり雀のことを信用している、というところも良い。

階級やお金ではなく商品の価値に見合った最良の売り方を考えるからお客さんに信頼される虎さん、
そんな虎さんを信頼して飽く迄ビジネスライクに徹する鷹頭さん。
面白いコンビだと思う。

時子が鷹頭がさん、牛島さんと呼んだ時に
名を呼ぶ順が逆、と鷹頭さんが指摘するところも好きだった。

「文句も不満も全員分聞いた、なので次はこの俺の話を皆が黙って聞く番です」
という虎さんの言い草が可愛いし、
「今の当主は虎三郎さんですよ」と皆を五百雀がたしなめるところが良い。

下足番を嫌がらずにやっていたこと自体も偉かったが
その時に本当は自分よりよほど下の人間である作蔵の仕事ぶりを見ていて
褒めて認め能力に見合った仕事を与える虎さん、
本当に階級などではなく大事なところを見ているのだ。
そして他のみんなを蔑ろにする訳でもなく、
三つ星は新作に弱いけれど目利き揃いだと全員の能力を信頼している。

下足預かり制度の廃止、思い切ったなと思う。
預かった方がたとえば現代だと万引き防止のような利点もあるとは思うが
やはり客が気軽に出入りができ、下足番の仕事がない分他の仕事に人数を割けるところは大きい。
皆が不安な時に、「大丈夫、俺たちならできる」とすっきり断言してくれる当主、心強い。

黒木屋の社長が息子に変わったことを知っているのに
わざと「克巳坊ちゃん」と言ってみたり
「潰れたも同然」と失礼なことを言われても
「なるほど」と返してみたり、牛島さんがただの良い人じゃないところも好き。

いよいよ開橋という時に、雨が降ってくるコマで
三つ星の一人勝ちを予感させワクワクする。
大雨にも関わらず大人数が殺到し、危険な状況。
日越が閉店を決断するの間違っていないのだが
うちがやれば他も閉めるという自信満々なところはちょっともやもやする。
「物見遊山の客に付き合う必要はない」という言葉も、潜在顧客の存在を無視している。

雨の日に番傘を貸してくれた古き良き時代。
皆が三つ星の番傘を差している姿を見て懐かしいと思う人や、美しいと思う人がいる。

寒くて避難してきて、下足を預けることもなく入れて甘酒を振る舞ってもらえて、番傘まで貸してくれる。
必要なら貴重品も預かってくれる。
痒いところに手が届くサービスだ。
しかも店側は、潜在顧客の名前と住所が手に入る。
単なる親切ではなくきっちり先を見据えているし、
ここでも経験値で上客になりそうな人はわかるだろう、と手代たちのことを信頼もしている。

雨が降りそうだからとプランを柔軟に変更する虎さんが偉いし、
時子さんが実家の職人さんたちを連れてきて古い番傘を修理してもらうところも良い。

時子は虎さんの期待通り、特別なお客様を見つける。
それが一人で行動できておしゃれな、女性であるというところも大きい。

白石さんがちょっと浮世離れした感じで、
でも時子の名前を覚えていてちゃんと約束通り訪ねてきてくれるところが好きだし、
同じ傘が橋を渡っている様子を浮世絵のようで美しいと表現するところが流石作家、
情景の浮かぶ表現だった。
時子さんはそういうことには疎くて作家だと気づいていないところもまた良い。
「次」が本当に楽しみになる。