琳さんが気取らなくて時間が合えば気さくに
会いに来てくれるところがとても好きだ。
それだけ憲ちゃんが好かれているということでもあるのだろう。
今さらドラマを見て、自分の顔は唯一直接見られないと気付き
でも能のシーンだけは違和感がなかったというのは面白い。
これまでの経験全てで、「花は自分が美しいことを知らない」と悟るのが憲ちゃんらしかった。

盲人の面の方が周りがよく見えるというのは
逆説的で大変面白い。
憲ちゃんの弱法師を見て、琳さんも葉月さんも
やる気を出しているのがとても良かった。
二人のストイックさも、憲ちゃんの舞台がどれほど良かったかもわかる。
そしてやっと憲ちゃんが、自分が思うように
周りも自分のことをすごいと思ってくれる可能性に気が付く。
お母さんが「じいじを見ているみたいだった」という感想なのも不思議だし、一緒に住んだことがなくても
血がつながっているというのはそういうことで、
だから「杖はちゃんと私の中に」と思えた展開が素晴らしかった。

海くんが子供らしい真っ直ぐさと大人っぽさを兼ね備えていてとても可愛らしい。
真剣に向き合っていても、フェードアウトできないかな
と思う自分もいる。
マトリョーシカのたとえも面白いし、
そうやって自分を育ててきたからこそ、
”まわりにはすごい人ばかり”という環境に身を置ける自分になるのだと思う。

憲ちゃんは自信がないと思い悩む割に結構楽観的なところがあって、
心配性な西門とは対照的だ。
西門が「まさかをやるのが人間」と、藁人形だって十分まさかだからと憲ちゃんを嗜めるところ、共感した。

ニュートンが万有引力を見つけた林檎、フラワー・オブ・ケント。
落果しやすいと聞いて「おれらしい」と思うのがなんだか良い。
可愛いと言われても人間だし男だし色々あるし、
”なんでもやるぞとも思うしもうがんばれないとも思う”
のが人間らしくてよく分かる。
”がんばろうと思うのも放り出したくなるのも人間
清らかにと願うのも呪うのも人間”。

氏子さんたちが悪気なく小野寺さんの噂話をしているところへ割って入って
「お百度参りって伺いましたよ?」と言う憲ちゃんが流石だ。
丑の刻参りをしていた小野寺さんだけでなく
噂を流した氏子さんたちのフォローにもなって素晴らしい対応。
それとは別に、目撃者だとばれるのではと憲ちゃんの身を案じる西門もすごく良い子だ。
まさかの弟子入りは予想外だったし、西門からしたら不安的中だろうが
一応然しもの憲ちゃんも楽くんに見てもらっていたのは安心した。
西門の怒りが楽くんに向くのは気の毒すぎるが。笑
山王丸の件や、氏子さんの件があったならそれは心配もするとは思う。

稽古を断っても逆恨みが怖いけれど、
自分だったら何を考えているかわからないから
怖いと思ってしまうだろうな。
大声を出さなきゃ、じゃなく出して良いんだと思って、
と言ってあげる憲人。
両者は似ているようで全く違う。
こんな教え方をしてくれる人に弟子入りできるのは羨ましい。

3.11を見て衝撃を受ける気持ちはわかる。
「いてもたってもいられなくなった」と言われて
「まかせて」と言ってくれる彩紀ちゃんも
流石憲ちゃんの妹だし可愛くて頼もしい。
わかったことを取り敢えず報告してくれるのも、
その時お茶とお茶菓子を持って部屋にくるのも
この家の環境をも物語っていて素敵だ。

伊豆は近いとは言え、行ってしまうのは紙一重の行動力で
西門でなくとも心配にはなる。
結果は小野寺さんを止めることができて、行動に出て良かったわけだが。

ラストですとんと葉月さんに「好きです」と言うシーン、とても良かった。