読み進めるのがとても辛い巻。
江島生島事件の時に近い気持ちだ。
どうして罪もないどころか、真面目に頑張っていた人たちが
こんな目に遭わなければならないのだろう。

失脚を覚悟していた田沼意次が凛々しく
だからこそ救ってあげたかったし
青沼がお咎めが自分だけで済んで良かったというところに
泣けてくる。
そこまでしなくとも、というくらい、手強い『敗者』に対して
非人道的な振る舞いをして徹底的に潰そうとするのは
いつの時代のどの歴史を見ても同じだ。

自分は主に幕末を勉強してきたのだが
その時代でも庶民は政治に興味がなく、言いたい放題で
そうやって鬱憤晴らしでストレス解消をしようとしていて、
結果そのせいで何がどうなって、国がどのような方向に行くのか
まで考えている人は少なく
目先のお金欲しさに敵軍に自分の殿様を売ったりしている。
真実も知らないのに、歯がゆいことだ。

源内さんの最期も哀しかった。
汚い人たちに目をつけられなければ、彼女だって幸せに生きられたかもしれないのに。
それでも最後まで源内さんらしく、また黒木さんの方でも真実を告げず。あの世で青沼さんに会えて、びっくりしただろうか。

これまであまり感情を表に出さすにいた黒木さんの慟哭が切ない。