ミュージカル『ジェイミー』観劇感想

久し振りの池袋

8月14日のソワレを観に行きました。
場所は東京建物 Brillia HALL。

本丸博ぶりの池袋ですが、コロナ禍なので誰とも待ち合わせもせず
ご飯やお茶や買物も無しで劇場と家との往復のみ。ちょっと寂しい。

本当はコロナが無ければ、上川隆也さんの『新陽だまりの樹』を観に
ここへ来ているはずだったんですが。

色々と残念です。

 

ジェイミーとは

主人公は16歳の高校生ジェイミー・ニュー。彼には一つの夢があった。

それはドラァグクイーンになること。そして高校のプロムに本来の“自分らしい”服装で参加すること。母親から真っ赤なヒールをプレゼントされたことをきっかけに夢に向かって強く突き進む思いを抱いたジェイミーだが、学校や周囲の保護者たちは猛反対。ジェイミーの夢を理解できない父との確執や周囲からの差別など、多くの困難を乗り越えながら、自分らしさを貫くジェイミーの姿に勇気と感動、そして幸せをもらえる、最高にハッピーなミュージカル!

https://horipro-stage.jp/stage/jamiemusicaljp2021/

実話が元になっており、ドキュメンタリー番組で広まったものをミュージカル化したもの。
私はこの日本版が初見で、事前に何も見ず観劇しました。
知らない人は是非知らないまま観に来てって流司くんも言っていたことですし。

 

まるで絵本を読んでいるような

話を知らなかっただけに、色々想像していたのですが
思ったよりえげつないことも無くて、奇を衒った展開も 無く
わかりやすい物語が鮮やかな色彩と凝った舞台装置の中で繰り広げられ
絵本をめくっているような気持ちになりました。

大人キャストの方々はやはり流石。
個人的にはレイ役の保坂知寿さんが特に好きでした。
歌が力強くて声の伸びも綺麗で、もっと聴きたかった。

歌はどれもキャッチーなメロディで耳に残りやすく
ザ・ミュージカルという感じでした。

ハッピーエンドでにこにこした気持ちで観終われるのはとっても良いです。

あとは、舞台転換が装置に加えて学生さんなどのキャストさんが出てきて
それも黒子としてではなくて恰好よくターンしたり
舞台上のキャストさんにちょっかいをだしたりしながらなのが
スタイリッシュでした。

割と『ジェイミーが主役』を徹底しているので仕方ないのですけど
もっと脇役たちのバックグラウンドやお芝居や歌も聴きたかったので
そのあたりは少々残念。
折角ミュージカル経験豊富な○○ちゃんをキャスティングしておいて
こんな脇役な使い方だとは思わなかった!みたいな感想を見かけたのですけど
役者さんによってはファンの方がそう思ってしまう部分もあったろうなぁと思います。

 

ネタバレあり感想

ここからはストーリー上のネタバレありです。

 

地味に先生が苦手

全体を通して思ったことなんですけど、先生が酷いなぁと。
ジェイミーを認めないこともそうですけど、のっけから普通に生徒たちの前で
妥協が必要、という流れで自分だって先生になりたくてなった訳じゃない
って平気で言っちゃうの、無いなぁって思いました。
先生もただの人、って話なんでしょうけれど。

 

お母さんは良き理解者

こういう話って肉親に打ち明けるのがまず一番大変かなと思うので、
お母さんもその友達のレイも既に知っていて応援もしてくれているので
びっくりしました。これは羨ましい。

 

平等にいじわるなディーン

自分が観に行った回は流司くんがディーン。
ディーンはいじめっ子というよりはガキ大将で、
ジェイミーだけじゃなく気になる子には誰にでもつっかかっていく感じ。
仲間であるサイも殴っちゃうし、ある意味平等だったのが意外でした。
もっとジェイミーだけを目の敵にしている感じなのかなって思っていたので。

言いたいこと言ってやりたいことをやっているようでいて、
クラスの中心人物でみんなが彼に従うかと言ったら実はそうでもないし、
浮いているわけでもないけれど言うほどちやほやされているわけでもない。
一人でいることも多くて、ちょっと異質な存在感がありました。

プリティとジェイミーが2人でいるところにも突っ込んでいくし、
ネクタイを引き抜いてそれでひっぱたいたりなんかして
本当に悪ガキなんだけど、ジェイミーに下ネタで逆襲されたら
「そんなことないよな?!」ってサイに確認に行っちゃう弱さもある。
このシーン、プリティのことを庇ってのことだけれど、
そうやってジェイミーが言い返せるだけの空気感はあるんですよね。
怖くてとても言えない、というほどジェイミーは弱くないし
ディーンも絶対ではない。

  

伝説のロコ・シャネル

プリティにハイヒールを見せた時に励まされて、ドラァグ・クイーンの衣装を見に
お店へ行くジェイミー。
こういうところも、迷いがちに見えて、引っ込み思案ではなくてすごく行動力はある。

店主でありロコ・シャネルでもあるヒューゴは素敵なキャラ。
シーンとしてもとても華やかでした。
昔の自分を思い出すせいか、高いドレスをレンタルさせてくれるし
ホットパンツもプレゼントしてくれるのが優しい。

ヒューゴのお蔭でステージデビューを果たすことになるジェイミー。

 

Work of Art

ジェイミーはプリティに相談しながら学校のトイレでメイクの練習をしているところを
先生に見つかってしまいます。
プリティが、ジェイミーの顔をキャンバスにした芸術だと苦し紛れの言い訳をしてくれますが
なら他の生徒にも見てもらいましょう、と先生がジェイミーをみんなの前に引っ張り出します。
これ、いくらなんでも教育者としてやっちゃいけないことだと思うんです。
もしメイクが校則違反だとしても、(そして多分海外の学校だしそんなことはない気が)
言い訳だとわかっていて晒し者にする。
敢えて一番嫌な気持ちになるだろうことを、級友たちに加担させてやるなんて
ただのいじめでしかなくて、ディーンよりも余程酷いと感じました。
多分無意識になっていることなのでしょうけれど。
先生が、男がメイクをするのはおかしいという偏見を持っていて、
その範囲から逸脱しようとするジェイミーを受け入れられないんでしょうね。

 

「気持ち悪い」という言葉

わざわざこれから出番であるジェイミーを掴まえて、
みんなで見に行って馬鹿にしてやる、と言ってくるディーンは本当に悪い子だけれど、
そんな行動に出るだけ余裕が無いとも言える。
自分らしく生きようとしているジェイミーが羨ましくて仕方なくて、
だから潰したいんだろうなと感じました。

少なくとも流司ディーンを見ていて感じたのですが
「気持ち悪い」という言葉を吐き出すような言い方をしているのが
ただ嫌悪感というよりも切羽詰まった苦しいものがあったように思います。
お父さんがジェンダー関連に理解がなくて、気持ち悪いと家で言っているとか
だから自分もそう思っていなければならないと思い込んでいるのかもしれません。

一方、「気持ち悪い」という言葉がたまたま父親に言われた言葉と同じで
刺さってしまうジェイミー。
ステージに立てないとまで言い出しますが、みんなが励ましてくれます。
ヒューゴが励ましてくれる歌も良かったです。
自分との戦いであり、ここで出ていかないと辛い日々は変わらない。
出ていったら、よくなるかどうかは兎も角何かは変わるはず。

ディーンを始めみんなが、応援というよりは興味本位で待ち構える中
ジェイミーはステージに立ちます。

折角の晴れ舞台なので、個人的にはもっとジェイミーを見たかったな。
後述しますが、せめてもう数秒、ジェイミーの姿を見せてから暗転にしてほしかったです。

 

噂のジェイミー

みんながジェイミーの噂をしているシーン。
個人的な予想に反してみんな比較的好意的に受け止めている。
ディーンはそれが面白くないのだけれど、
流司くんの演技がとても素敵でした。不機嫌さとアピールしてみんなを従わせようというよりも
我知らず気持ちが漏れ出てしまう、という感じで足をとんとん、と動かしたり
こんなはずじゃなかったのに、という単なる不満よりも悔しさ、哀しさ
という感じの表情だったりで、目を奪われました。
一人で携帯をいじっている姿が寂しい。

デビューしたことで自信もついたのか、ジェイミーはメイクをして学校へ来ます。
表情も話し方もとっても明るい。
ヒールを履いて外を歩いてみたら、と言われた当初はとんでもない!という感じだったのに
大きな進歩です。

それが、ディーンは悔しいんでしょうね。
自分は何をやってもうまくいかないのに、もしくはやりたいことなんて見つからないのに、
なんでこいつは前へ進もうとするんだ、うまくいくんだ、という感じでしょうか。
この後ディーンのお父さんは息子に言われるがまま学校へ苦情を入れるけれど、
息子への愛情があって、愛息子の言うことを真に受けて
彼を守りたいからという行動では無いのかもしれない。
先生という『素晴らしい職業』に就く、と嫌味を言っていたディーンは、
そういう”つまらない”ことしか自分には出来ないと思っているのか、
はたまた親に言われてそういう道を目指しているけれど本意ではないのか。

みんなが出ていってしまって、最後に残ったディーンとジェイミー。
ジェイミーに話しかけられて、やっぱり悔しくてやるせないのか
悪口を並べるディーンだけれど、ジェイミーはキスをして黙らせます。

 

再びの逆風

先生に親を呼び出されてプロムにドレスを着て参加することを禁じられるジェイミー。
この時の先生の言い草も非常に引っかかることばかりでした。
やっぱり先生は、ジェイミーのことを認められないんですよね。ごく個人的に。
それを、父兄からクレームがあったとか、みんなのことを考えろとか
正論に見える言葉で覆ってジェイミーの反論を封じ、
「間違ったこと」を力づくで正そうとしている。


その間中ステージの2階で佇んでいるディーン。
セットの奥で観客からストレートには見えない位置にいるんですが、
なんとも言えない表情なんですよね。
計画通りうまくいってワクワク、という感じではなくて
つまらなそうな、悲しそうな、曖昧な表情をずっと浮かべている。
「こんなにうまくいくなんてな」と悪い子全開で言いながらも、
実はちょっとうまく行き過ぎて拍子抜けしていたところもあったのかもしれません。

お父さんや先生が「偏見は良くない」なんてディーンに言ってきて
自分の目論見が崩れることを、心のどこかで望んでいた節もあったのかも。

 

ひとつだけ正しいこと

プリティにジェイミーが相談したとき、彼女が先生の言っていたことでひとつだけ正しいことがある、プロムはあなただけのものじゃないと言ったのは印象的。
あんなに先生が色々言っていたのに、「ひとつだけ」と言えちゃうのが
プリティの頭の良いところでもあり、ちょっと辛辣なところでもある。

確かにステージ衣装を着るのはやりすぎなのかもしれません。
プリティがヒジャブを決まりだからではなくて好きだからつけている、というのも心に残りました。

 

お母さんとの喧嘩

プリティと話したことで、父親に会いに行くことにするジェイミー。

マーガレットの気持ちはわかるけれど、せめてドレス代を払ってもらったことを最後の嘘にして、
お父さんは新しいお家で子供が生まれることになったからもう会えない
という風に伝えてあげていたら良かったのですが…。

小さい時気持ち悪いと言われたけれど、今は応援してくれている。
そんな幻想が打ち砕かれてしまったジェイミー。これは辛い。
実は気づいていたパターンなのかなとちょっと思っていたのですが、
ジェイミーはすごく純粋な子でした。

お母さんは、もし昔の自分に会えたとしても、この道を選ぶ。
それほどジェイミーが宝物だと思っている。だからどうしても本当のことが言えなかった。
ジェイミーが傷つくから。
お父さんに傷つけられたジェイミーが、
なんで嘘をついていたのかとお母さんに怒る気持ちはわかるけれど、
ああそれは言っちゃいけない、というところまでお母さんに感情をぶつけてしまうのが切ない。
お母さんの深い愛情を感じる歌唱シーン。

一方家を飛び出して、お酒を飲んで外を彷徨くジェイミー。
不良に絡まれているところを、偶然ヒューゴが来て助けてくれます。
私これ、ディーンが来て助けてくれるフラグなのかなってちょっと思ったんですよね。
ディーンはジェイミー自身が憎い訳じゃなくて、ある種の八つ当たりで。
今ジェイミーがお母さんにしてきたのと同じ。
そんなドラマチックな展開を期待しちゃったので、ヒューゴだったことには
ちょっと拍子抜けなところはありました。
でも、大人が助けてくれるというのは正統派な脚本だと思います。
ヒューゴは”先輩”であり、男性でもあり、大人だから。

ジェイミーは家へ戻り、お母さんに謝ります。

 

プロム当日

派手なドレスではなく白い衣装でやってくるジェイミー。
パンツスタイルでもあるし別に良くない?って感じですが、先生には止められます。
なんで? って思ったし、一転してOKにする理由も弱いなと感じちゃいました、自分は。
ただ生徒たちがジェイミーの味方で、それも変に肩入れしたり同情したりじゃなくて
私はいいと思う、あなたには似合ってる というスタンスなのが良い。
ジェイミーもちょっと大人になって、無理ならそれでいい、でも男らしいスーツは着たくないから
じゃあこれで帰るからみんなは楽しんで、っていう感じで
入れろよ差別だ!とかわかってくれないとメソメソするとかが無いのが見ていて気持ち良い。

プリティがディーンにしっかり言い返すところも恰好良かった。

ディーンについては後述します。

 

アフターパーティ

と題した、アフタートーク。
自分の探し方が悪かったのかもしれないんですけど情報が見つからなくて
何時から何分くらいあるものかさっぱりわからず。
割と間髪入れずに始まったんでちょっとびっくり。

参加メンバーは劇中で椅子として使っていたボックスを持って出てくるんですが
それが終業式とかに体育館に行く生徒みたいで可愛かったです。
流司くんに至っては、椅子が重たくて持てず引きずるというマイムをしながら出てきて
早速会場から笑いが。
流司くんファンの我々にとってはいつもの感じですけど、
知らない方にとってはディーンとのギャップがすごかったんじゃないでしょうか。

自分はこの日が初見だったので比較できなかったのですが
M-1のダンスで一部アドリブで、流司くんが考えているのだとか。
「日替わりなんです」「日替わりにしました」
「ジェフリーさんが帰っちゃったんで、いいかなと」。
現時点で3パターンあって、まだ増えるかもしれないらしい。
カテコで詠斗くんがバク転するかと見せかけてやめていたのですが、
バリエーションとして「あれみんなでやる?」って流司くんたちが言って、
颯くんが「それじゃキョンシーだよ」って言ったのそのとおり過ぎて笑いました。

司会の方から感想を訊かれて、
「日々発見で、発見の多い毎日なので発見でしたね 」
と流司くんが発見を繰り返していたのですが、
詠斗くんが自分のターンで「発見の毎日」と被せてきて、
流司くんに顔を覗き込まれて尚「発見しました!」と笑顔で言っていて、
「おれら趣味発見だもんな」とわけのわからない返しをする流司くん。笑
颯くんが「楽屋でもこんな感じ」と言っていました。

詠斗くん演じるサイがジェイミーに突っかかっていくシーンは、
ディーンが指示して行かせるけれど、つっかかり方が足りないので
ディーンが怒ってサイを殴るという設定なのだとか。
「あたりが弱い」と流司くんが言っていて、颯くんも「もっと強く来て欲しい」と言ってました。
更に「(一皮むけて)大西詠斗になれよ」という流司くん節で会場も笑っちゃってました。
基本的にみんなずっとわちゃわちゃしていて、本当に学生みたい。

流司くんのポリシーで好きなもののひとつが、役者が仲が良いほうが良い芝居ができるっていうやつで、
映画『小説の神様』でも流司くんがリードして一晩で仲良くなってて監督がびっくり
ってエピソードがありましたけども。
ジェイミーでも仲良くやっているのが窺い知れます。

男子の楽屋で恒例のジュースを奢るじゃんけんやルーレットをしているそうですが
この日は1〜20の数字を順番に早押しするゲームで勝敗決めたそうで
流司くんが1位だったとのこと。

こだわりのシーンについて訊かれた流司くんが回答していたのですが。
ジェイミーの赤いヒール、観劇中も無造作に揃えて置かれているだけでも、
擦れて傷がつきそう、と思って見ていたもので、

ディーンが力いっぱい投げ捨てたのが絶句でした。
初めはジェイミーの顔を見ながら目の前に落とすという、それはそれで嫌味な感じの
やり方をしていたけれど、投げるというより酷いお芝居になったそうです。
ジェイミーの大事な靴なのに投げちゃうシーンが、という説明の時に
流司くんが120ポンドなのに20ポンドって言い間違えてて突っ込まれていて、
「20ポンドじゃへぇボタンくらいしか買えねぇもんな」って言ってたのも面白かった。
因みに20ポンドは3,031円、へぇボタンは当時2,178円だったみたいなので大体正しいです。笑
へぇボタンは、雑誌のインタビューでご両親に買ってもらって嬉しかった物と
答えられてましたね、そう言えば。

この後詠斗くんが訊かれた時、すぐには思いつかなかったのか
「流司くんお願いします」って言っていて
「またオレ?もういいでしょ」って感じで流司くんが苦笑いしていたのも笑いました。


皆さんにメッセージと言われて、流司くんが
学生時代に自分より背の小さい小杉くんの学ランを借りて短ランみたい、と遊んでいたら
学校にそんなものを持ってくるなと先生に怒られて取り上げられてしまった、
というエピソードを話していて。
ツッコミ待ちなんじゃないの?と周りがこそこそ話していたのですが
突っ込まれないままオチまで行ってしまって、
「ジェイミーってそういう話かな、と(ツッコミ待ち)」
ってなっていてそれだけでも面白かったのですが
颯くんがそれを受けて話し始めたのでなにか突っ込みつつまとめてくれるのかなと思ったら
「キスシーンが今回初めてだった」
というご自分の話で特に流司くんの話は拾ってもらえなくて、みんな崩れ落ちてました。笑
矢部くんの唇は固くてしっかりしていて、流司くんはぷるぷるなんだそうです。
流司くんが初キスがディーンだったと言っている横で、ごちそうさまです🙏ってしていて
面白かった。
颯くん 曰く、ディーンを演じている流司くんはとっても怖くて、舞台上で対峙しているとき
膝が震えているんだとか。
流司くんが笑いながら申し訳ない、って言っていました。
颯くん 、その後流れるように会話を締めてくれていて、天然キャラだけどしっかりした座長さんって感じでした。

ところでわけのわからないお話として扱われていたこの制服の話ですけど、
先生とか学校、ルールの不条理さとか、同じことをしていても見え方が違う偏見であるとか
なにげに確かにちゃんと、”ジェイミーってそういう話”なんですよね。

 

気になったところ

ストーリーについて

ミュージカルが、なのか日本版が、なのか自分には判別がつかないけれど
よく言えば平易、はっきり言うとストーリーが浅い。
ストーリーが酷い!という感想を持っておられた方を事前にお見かけしたので
自分もそう思いそうだな…と心配しながら行ったので、予想よりは良かったけど。
因みにこの手の話だと、『BILLY ELLIOT』は好きでした。

父親にボクシングを習わされていたけれどビリーはバレエの方に興味を持ち
偏見を持たれながらもバレエダンサーを目指す話。
自分らしく生きるとか、テーマ的には近い。

脇役が本当に脇役で、正に『ジェイミーが主役』に振っているので
物語としては脇役が掘り下げられず深みが出ないのはまぁ仕方ないかなとは思います。

 

演出について

脚本は結構、そのまま訳しているのかなと感じました。
実際どうかは知りませんが。
台詞回しが海外のちょっと古めの文学小説を読んでいる気分になったので。
必要以上に下ネタ台詞があるのもそんな感じ。
クソという言葉を女の子や真面目な子が言うのはびっくりすること、みたいな空気とか。

ジェイミーの放課後 #003 で流司くんが言っていたみたいに、
だからこそ”悪役”であるディーンは多方面に口が悪いのだろうなと。

2時間半もあるのに、キャラがあまり掘り下げられないのが勿体ないし、
余韻があんまり無く感じました。
ここは外国の方ならではの感覚なのかもしれない。
1幕最後に、やっとジェイミーが決意して、華々しく舞台に登場するのに
ばん、と出てきてすぐ暗転しちゃうの残念過ぎる。
個人的にはあと2秒は欲しかった。
2幕はステージから始まるかと思えばもう翌日だし、
プロムも会場に向かうところで終わってしまう。
この2箇所はカットするかしないかは賛否が別れるところだとは思うけれど、
個人的にはプロム全体は描かないにしても、
少なくともディーンとのダンスは見たかったし、それがなくても
ディーンの手をジェイミーが引いていくその後の余韻が欲しかったです。

事前のインタビューや特集を見ていて、ディーンが意地悪なことに意味があるとか
意地悪だから最後が良くなるみたいに言われていたけれど
意地悪な意味は思っていたのと違ったし、和解というよりは
ディーンが少しだけ吐露できただけな感じがしてしまった。

  

劇場について

2019年11月にできたばかりとあって、とても綺麗。
入り口が多少わかりにくかったのと、入ってまず上へあがらねばならず、
更に1階席に行くのに上まであがらないといけないので移動は結構大変です。

これは劇場側の問題なのか運営側の問題なのかわかりませんが、
導線がしっかりしていなくて列もごちゃっと固まりがちで密になりまくっていました。
距離を開けるような指示も無し。
それが気になったので、フォトスポットで写真を撮りたかったけれど諦めました。
靴の消毒も無かったよね?あったっけ…。

会場内でも会話を控えるよう看板を持ったスタッフさんがいてくれてはいるのですが、
会話をしている人に注意することはなかったので、
前後は複数人で一緒に来ていた人たちだったもので
開演までずっとお喋りが煩かったのも気になった点。

座席は少々狭めで、荷物を床に置いてしまって人が来ても避けない人が多いと
列の半ばまでは非常に行きづらいです。
マナーとしても座席の下に入れてほしいですし、雨だったので床置き傘が
トラップみたいになっていて危険。
コロナ禍ですし床に置くのも気になるので、自分は傘は持って鞄も膝の上で抱えていました。

足の前に置くにしても、人が通る時は鞄持ち上げるとかして避けてあげて欲しい…。
あと狭いのにどうしても足を組みたいのか、何回か後ろの人に背中蹴られました。
笑った時に体が動いた同じ列の誰かの振動も伝わりやすくて
あんまり劇場には良い印象が無かったです。
総工費80億円超だそうですけど……。

コロナ対策か、会場内はかなり寒く、上着を持っていったにも関わらず
寒くて震えてしまう程度には寒かったです。

 

音響について

事前に検索した時に、音響が良いとか悪いとか、
席によって違うというクチコミを結構見かけたので心配していました。
いざ始まった時オケは綺麗に聴こえるから大丈夫そうと思ったら
劇場の問題なのかPAさんの問題なのかわかりませんが
役者さんの声が聞き取りづらい。
女性の高音は聞こえるのですが、低音は聞き取りづらく、男性の低音ともなると台詞が何を言っているのかわからないことがありました。
ので正直流司くんなんかシーンによってはかなり聞こえにくかった。
流司くんのことを知らないっぽい方が、
「滑舌が悪いのか何言ってるのかわからなかった」って言ってらして
流司くんは滑舌とか聞き取りやすさにすごく気を使ってくれる役者さんなので
流司くんのせいじゃないと思う……と思って悲しかった。

でもあれは、役者が悪いのかもって思っちゃうと思う。
私流司くんのマイクが不調で入ってなくて生声なのかと思いましたもん、最初。

男女混声の歌だと女性の高音が際立つ。
席によって聞こえ方が違うというレビューも見かけたので、
たまたまかもしれないけれど、1階席比較的前、ほぼセンターだったのに
割と大事な台詞も聞き取れなかったのが残念。
女の人同士とか、女の人と、高音のメロディが多い男性の歌は綺麗に聞こえました。

アフターパーティ(アフタートーク)ではMCの女性の声が聞き取りづらいし
拍手が起こると役者の声がほぼ聞こえなかったです。

 

劇場の外では

女性客が多い舞台にありがちなんですけど、お喋りに夢中で固まったり
のんびり歩いたり道の真ん中で止まったりが多くて。
車道を塞いでいたり、前を詰めてくれないせいで歩道からはみ出たりで
これ町が町なら普通に劇場に苦情がくるだろうなって思いました。

 

カーテンコールの撮影

最近そういうお芝居も増えているし撮影OKなのは初めてじゃなかったんですけど、
大体事前にこのタイミングからOKですって案内があるか、
今からOKです、カメラの準備は良いですか? ってなってからはいどうぞ!
って感じだったので、そういう準備を待ってくれる感じもなく流れるように始まり
あっという間に終わっちゃったんで綺麗に撮れませんでした💧
コロナ禍前のルールに従ってちゃんと携帯の電源落としていた方は
一枚も撮れなかったってぼやいてらっしゃいましたけど、
それはそうでしょうね、というくらい時間なかったです。
何回も通ってる人はタイミングわかってるし、
カメラの準備始めながらお芝居を見つつカテコ待ってる方もいらっしゃいましたが。

 

ディーンの解釈

ちょっと悪い子、だけれど、たとえば
歩き方は背を丸めてのしのし、じゃなくて膝を伸ばして大股歩きで
ハイローの泰志のような不良少年ともまた違う。
相変わらず流司くんの演技の抽斗の多さには脱帽です。
ディーンという人物のバックグラウンドの想像を搔き立てられるお芝居でした。

王道だったら普通に単なる悪い子として演じても良かったはずだけれど、
王道からちょっとはずした役作りを好む流司くんでもある訳だし
そういうガキ大将な王道のディーンではなかった。
相当台本も読み込んでなぜディーンはこういう行動をとるのかを考えた上での役作りの様子ですし。

舞台を拝見して気になったところがいくつかあって。
事実がどうだったのか、ほかの国での脚本はどうだったのかも知らないまま
単なる深読みかもしれない自分の考えなのですが。

なぜジェイミーは、ディーンにキスをしたのか。
普通に振り払う、逃げるという選択肢でも本当は良かったはず。
確かに意表を突くことはできるけれど、嫌いな人間にキスはしないだろうし
ちょっと脅かしてやれというなら何も唇にしなくてもいいと思うし、ハグでも良かったと思う。
ある程度以上の好きな気持ちが無いとできないと思うんですよ。
私だったら絶対嫌だもの。自分をいじめてくる大嫌いな人にキスするなんて。
これで言ったら、ディーンの方もそうなんですよね。
少なくとも自分が見た回のディーンは、驚いて後ずさって、
ちょっと、唇に触れようとするような動作をするだけ。
気に食わない嫌いな人にキスなんてされたら普通不愉快だし、まず拭おうとすると思うんです。
そして急いで洗いに行くと思う。

本当はディーン自身は、偏見の無い人なんじゃないだろうか。
お父さんが言うからそれに従っているだけかもしれないし、
もっと言ったらディーン本人か近しい人がジェンダー的な或いは
その他なにかしらのセンシティブな悩みを抱えている可能性すら
考えられなくもない。

ジェイミーにつっかかりたくなるディーンという人格が形成された理由は、
やっぱり両親のせいなのではないか。
周囲の友達たちは偏見がなさそうな訳だし。
ディーンの両親が偏見がある人なのは、ちょっと息子に聞いたら
学校に苦情を入れてしまうところからも窺い知れる。

親が苦情を入れて先生がそれに従いジェイミーを呼び出す時の
ディーンの表情が本当になんとも言えない切なさで。
つまらなさそうでなんだか可哀想ですらある。

「おまえなんか全然特別じゃない、ジェイミー・ニュー」
という言葉は、自分へも突き刺さっていたのだろう。

2幕の初めでみんながジェイミーをもてはやしている時も
とても孤独に見えて。

一番それを感じたのは、やっぱりプロムの時。
仲間たちもみんな自分たちで楽しそうにしていて
ジェイミーのことも歓迎している。
それを止めようとして、止められなくて、舞台下手でひとりでうろうろする
流司ディーンは、まるで孤独な狼のように見えました。
彼から出てくるのは怒りとか加虐ではなくて、苛立ちと切なさなんですよね。

涙を堪えているように見えました。

※追記
別の日のアフタートークにて、詠斗くんが話してくれたエピソードによると、
流司くんの作った裏設定で、昔はジェイミーをみんなで囃し立ててからかっていたジェイミーコールが
今はジェイミーを擁護するコールに変わっていて、それを思うと涙が出そうになって
堪えているのだそうで。
幼馴染で、けして仲良しという間柄ではなくとも、ここに至るまでの十数年の年月が
流司ディーンの中にはちゃんとあるんだな。

ジェイミーはクラスメートたちだけじゃなく、
お母さんやレイ、ヒューゴなんかの大人たちという味方がいる。
ディーンには誰もいない。

ジェイミーがプロムに参加できることになった時の脱力感。
ここでも、先生に「なんでだよ」と食って掛かるとかじゃなく
「やっぱり駄目だった」という喪失感と感じました。
自分の思い通りになることはなにもない。

この先オレが前を横切ってもお前はオレに気づかない
という言葉も、血が滲むようなしんどさがありました。
自分は特別じゃない。ジェイミーは特別。
そして、特別じゃない自分が本当は嫌で抜け出したいけれど、できない。
この言葉に対して、ジェイミーも絶対気がつくと返すし
一緒に踊ってほしいと言うところが、ジェイミーもやっぱり
ディーンのことは特別に考えていたんだと思うのです。

だからキスもしたし、和解もしたい。

自分が見た回では怒りに任せて投げた上着を拾いに行き
ジェイミーの願いは無視するのかと思いきや
戻ってくれたディーンでしたが、
その後跪いて誘う演技に変わったらしいですね。
是非見たかったです。
ディーンのプライドや思いやりとして、きちんと正式に自分から誘う。
それを見て、僕がリードするの、とジェイミーが言うの、
より素敵です。

また、ジェイミーのコサージュがハプニングで落ちてしまって
取り敢えず手に持っていたところを
ディーンが取り上げて胸につけ直してあげて、
それから跪いた回もあったそうで。
ハプニングがまるで演出かのような素晴らしいシーンに変わるのも
実力のある役者陣が揃った舞台というリアルタイムの場所だからこそですね。

円盤は出ないんでしょうか…。
出ても、日替わりが収められるなんていう手厚さは望めないでしょうが、
コロナ禍もあって観劇自体を諦めた方もいらっしゃるし
私のように回数を制限した人もいるでしょうから
円盤か配信があったら有り難いなと思います。