印象的には昭和の文学のような地の文の雰囲気がある。
ご友人のピアニストの方の協力もあったからか
かなりの分量が挟み込まれている音楽談義が
非常に重く、クラシック音楽を知らない人には特に難解で
その割にミステリ要素の部分には意外とそこまで
関わってこない。
シューマンの人となりが主なポイントになってくると思う。
元々ある程度の知識がある方、ピアノを習っていたことがあるとかシューマンが好きであるとか
そういった方はかなり楽しめるのではなかろうか。

このシューマンに関する記述が出典があるのか
オリジナルの創作なのか疑問に思う部分があった。
ソースを検索してみたが見つけられなかった。


ネタバレになるが
まず殺人が起こるタイミングがかなり遅めであり
長々と主人公の語りが続く点、
主人公の名前が中々明かされない点から
修人がシューマンからくる実在しない人間オチだったら嫌だな、まるでオヤジギャグなネーミングだし
と途中で思ってしまったもので
まさかその通りの展開になってしまってがっかりした。

実は主人公が書いた小説である、といったパターンかなと思っていたのだが
幻想、狂気、というオチはミステリとしては残念。
だったらなんでもありではないかと思ってしまう。
手記の中で本人の告白があったが実はこうで、という
ネタバラシかと思いきや
更に妹の手紙という回答編は唐突感もあったし
怒涛の展開、どんでん返しというよりは
すぐに覆されて冷めてしまった。

殺人事件自体も唐突な印象だし
トリックや動機を予想しながら楽しむような描写ではないので、自分の好きなミステリとは違ったようだ。