レーエンデ国物語 感想

高評価らしく読んでみたが、自分には全く合わなかった。
帯に書いてあることも全く共感できなかった。

”『指輪物語』『ナルニア国物語』『十二国記』『ハリー・ポッター』『ダレン・シャン』そういった物語に魅了されたあの頃の自分に届けたい一冊です。”
”、「『十二国記や獣の奏者に続く!本格ファンタジー!』”
という言葉も使われたそうだが、ハリポタは兎も角
指輪や十二国記、獣の奏者が好きな人がこの作品を好きになるとは思えない。
これらの作品名を挙げるならてっきり本格的でリアリティのあるハイファンタジーかと思いきや
ファンタジーっぽい言葉や設定を並べてはいるが、
芯が通っておらずあやふやなことばかりのラノベという印象。
十二国記、獣の奏者と共通するのは少女が主役というところだが、
お子様からの恋愛脳で冒険譚や成長物語ではなく、活躍もこれといってなかった。
16歳でしかも領主の娘という立場に自覚的な割には言動が幼い。
とても本格ファンタジーとは言えない内容である。
ティーン向けのラノベというジャンルであればここまで期待してがっかりはしなかったと思う。

銀呪病という設定はいかにもファンタジーだし
美しいとも思うのだが、詳細が曖昧。

トリスタンが尊敬する英雄を恨み、
殺害しようとまで思っていたのにまた心変わりするまでが
いまいち共感できなかった。

ユリアも父親が好きだと言い無邪気に誓わせたりするのに
母との仲をこっそり疑っているのはなんだかなと思う。
英雄の娘の割に周りから全く大切にされないのも違和感。
なのに政略結婚をしなければと思い込み
しかしレーエンデの民になってもいいという考えが出てくる。

その場の思いつきで揺らぐ聖典というのも理解できないし
刃を突きつけてまで追い返す男がいて
日中でも足を滑らせ動物に会う森もある中で
夜はマルティンに行けば昼は一人でいても良い理由がよくわからない。
娘が客人に良くない態度を取るのを父親はなぜ看過するのだろう。
その内仲良くなるだろうとは思っていたが
随分時間がかかったし、その割にはあっさり急激に仲良くなった。

祭りで流血沙汰、しかも暴行事件なのに喧嘩と軽く扱われ
ユリアの方から誘ったなどと大声で言われてあまりに治安が悪い。
仲良くなったとしてもそこまで深い仲でもないのに
病をカミングアウトすることを強要するのもどうだろう。
レーエンデの外に出たら悪くなる病を抱えた人を
ヘクトルが連れて行こうとしていたのは知らないからなのだろうか。

ヘクトルが皇帝になるという話だが
そもそもそこまで人気がある人がどうして
現況に甘んじ娘が政治の道具にされるような状態にあるのだろう。
法皇に働きかけゆくゆくは皇帝が必要なくなる
という構想が随分壮大である。
この世界観の中でどこまで現実的なのかよくわからない。
病を根絶しようというとき、医者の意見を聞くなり
まず医者を連れてくるなり、鱗を採取して研究するなり
なんらかの専門的な対策は取れないのだろうか。

毒を盛られたり娘に危害が及んだりする危険性があるのにどうも旅の仕方が能天気に感じる。
ガフに声をかけられたことを父親に報告していないし、
護衛も兼ねているのにトリスタンが疼痛のことをヘクトルに報告していない。

冒頭では領主の娘が自由に行動できない書きぶりだったが
結局何年も外国で暮らしたまま。
しかも父に同行している訳でもなく、意外と自由に過ごせている印象だ。
最愛の人の死も忘れ形見のお蔭で乗り越えられた、
はよくある話だと思うが、
好きな人が死にそうだからその前に妊娠したい
という願いを口に出すのはすごいなと思うし
それを父親が祝福するのもちょっと普通ではない。

襲撃に遭って助けを求める訳ではなく
隠れていろという言いつけを破って囮になろうとし
逃げ切れる勝算もないのに満月の夜の森へ行くのは
浅はかにしか思えない。
数年前とは言え外に出るなとあれほど言われ、
天満月の乙女云々の話を聞かされて震えていた筈が
すっかり忘れて洞窟で赤ん坊を抱いてしまうのか。
迷信深い筈なのに好きな女の直感ならば信じてしまうトリスタンも疑問だ。

更に守る為とは言え、何故ユリアを慰み者にしていたと
悪ぶった発言をするのだろうか。
相思相愛の結果だ、というので良かったのでは?
直前まで仲良く話していた人たちが豹変するのがただただホラー。
そういう迷信、風習、部族だといっても
リリスは変わらずにいてくれるのに。

お腹が大きくなってもいないのに他人が見て歩き方が違うとわかるという描写も謎だ。
筆者は男性なのだろうか。

報連相ができていないし、ガフを取り逃がしたことを
甘く考え過ぎではないのか。
それで襲撃されたのに、その後もっと行方を調べたり護衛をつけたりはしないものか?
父親がいない間に変な男に嫁がされそうになったのに
またいない時にガフたちに詰め寄られるのか。
ヘクトル側も、侍従は返してしまったとは言え
身分からしたら護衛や部下をつけて然るべきで、
しかも目が見えなくなってきているのに
病で体が動かなくなってきている人と2人で
敵のいる中を旅するのはあまりに軽率だ。

ダリアのことも初手から信じてしまうし
身籠っていることの口止めもしない。
しても無駄だったとは思うが。
裏切られたのに、ユリアを助けたいと言われたらまたすぐに信じる。

終章として駆け足で話が終わらされ
あまりにも途方も無いと思われたヘクトルの展望も
『紆余曲折を経て』あっさり首長になるし
ユリアは結局ゼロアと結婚している。
自分らしく生きるのではなかったのか。
続きを読めば終章で端折って紹介された部分の詳細が明らかになるのかもしれないが
とても読む気になれない。