ブログ

キャラメルボックスの休止のニュースを聞いて考えたこと~キャラメルについて~

キャラメルが好きだった、ということ

5月31日21時に、演劇集団キャラメルボックスが活動休止を発表した。http://www.caramelbox.com/

私がキャラメルボックスを知ったのは、『広くてすてきな宇宙じゃないか』だった。

たまたまチャンネルを合わせたら

深夜テレビでやっていて、
途中からだったのに

話に引き込まれ

目が離せなくなり
翌日学校なのにも関わらず最後まで見てしまった。
それ以来のファンだから、それなりにファン歴はあると思う。

中学高校と演劇部に入っており、すっかり芝居にのめりこんでいて
演劇関連の学部のある大学に進むつもりだった。
これについては周囲の反対に押し切られ叶うことがなかったのだが
これはまた別の話。
兎に角、真剣に演劇をやっていた。
深夜テレビを見て衝撃を受けたのも、自分が知っている
暗転してスタッフが舞台を転換するようなもたもたしたものではなく
ひとつの舞台を照明で3つにわけ、スピーディに切り替わっていくのが
とても勉強になったし演技に引き込まれた。
その後上京して劇場に行ける環境になり、生活費を切り詰めて
毎公演必ず一度は見に行った。
当時貧乏学生で、500円が大金だったときだった。
それでも裾野を広げようと友達を誘ったり、DVDを買ったり
熱心なファンであったと思う。

自分が好きな役者が劇団を辞めてしまったり
主役を務めなくなってきたりして、
距離を置こうかと思ったこともあった。
しかし『我が名は虹』で畑中智行さんの芝居を見て
この人はきっといつか沖田総司か土方歳三が出来る人だと思った。
自分が大好きな『風を継ぐ者』もこの人がいれば
また公演されるだろうと思った。
だから私はファンを続けてきたし、
その頃には劇団内の世代交代もうまくいっていたように見えた。
好きだった女優が若手に主役を譲ること自体は
少し寂しかったけれど、主役の母親などの重要な役を
存在感のある演技で支えてくれとても見応えがあった。
たとえば『まつさをな』の坂口理恵さんの演技など
本当に素晴らしかった。

『君の心臓の鼓動が聞こえる場所』の時は
ブロガー取材にも参加させてもらったし
真柴さんの話はとても印象に残っている。
西川さんの丁寧な回答にも、如何に真剣に役作りをして
舞台に臨んでいるのかということが窺い知れて今でも覚えている。

『クロノス』は実は原作はあまり好きではなかった。
しかしあの短編をここまで大きく膨らませ
原作にない周囲の人物たちを追加して大きく話を作り変えていながらも
重要な芯の部分は全く変わっていなかった。
そればかりか原作で私が不満であった、
吹原は何故そこまでするのかと言う理由が補填され
そんな

吹原を泣きながら止める妹という存在、

頼人が「今度は俺が行く」と言ってくれたことで

吹原

の真っ直ぐさが際立ちかつ周囲の愛情も伝わってくるという
最高の脚本だった。
館長の正体は特に素晴らしかったし、
この坂口さんと畑中さんのお芝居はとても良かった。

このクロノスで完全に成井さんの脚本に信頼を抱いた私は
原作物でも進んで見に行くようになった。
先に原作を読んでいても「これは違う」とはならない、
絶対に素晴らしいものに仕上げてくれるという安心感があった。
実際容疑者χの献身も素晴らしかった。

面白いと感じられなくなった

しかしいつの頃からだったろうか。
脚本に違和感を覚えることが多くなってきた。

元々5ちゃんねるなどでは、「上層部のえこひいきが激しい」
「同じ人しか主役をやらない」「新人が飼い殺しにされている」
などの批判を目にすることがあった。
自分自身そこまでではないにしてもそれに近いことは感じていた。

泣ける芝居だというのを強調されることも好きではなかった。

映画などで泣けるといちいち宣伝しているセンスのないCMをよく見るが、
別にこちらは泣きたくて見に行っているわけではなく
良いものを見たいだけなのだ。
泣けるのを売りにされても、自分はしらけてしまった。
それに、加藤さんが「ハンカチでは足りないバスタオルが必要だ」
などと言い、古参のファンの人なども「バスタオル2枚はいった」
などとツイッターで会話しているのを見かけたこともあるけれど、
私は泣けないどころかつまらなかったと
感じてしまうことも多くなった。
自分たちが提供している芝居が面白いと自信を持って言えることは
とても良いことだと思うのだけれど、
制作側と古参ファン、嫌な言い方をするなら所謂信者だけが
面白いと盛り上がっている状態に見えてきた。

もともとキャラメルの芝居は学生演劇から始まっていて
垢抜けないとか青春ものしか無いといった評価もあった。
ある意味では初心者向けであったし、
芝居が好きなのではなくてキャラメルが好きなのだという人もいたようだ。
だからこそ、信者が集まりやすい環境ではあったかもしれない。

自分が昔から好きなミュージシャンでも同じことが言えるのだが
ファンの高齢化は問題点のひとつだ。
それ自体は悪くないのだが、新規の顧客が掴めないと
先が見えない閉じるだけのコミュニティになってしまう。
そうなると悪くすれば古参ファンが新規参入を邪魔して
結局そのコンテンツが廃れてしまうことはよくある。
初めて劇場に観に行ったとき、まだ芝居が始まっていないのに
姿勢を変える為に一瞬だけ前のめりに座ったツレに
嫌な言い方で注意してきた古参ファンがいたことは今でも覚えている。
一人で初めて行ってルールもわからなくて、かつ
まだ開場しただけなのに「そんなことも知らないのか」と高飛車に注意されたら
もう観に行きたくないと思う人もいると思う。

少しでも否定意見を言うと「アンチだ」と言われ
劇団にもファンにも新しい風が入らず、マンネリになり
ワンマンで劇団と古参のファンだけが満足する世界になれば
先細りしていくことは目に見えている。

あまり間を置かない再演が増えたり、
賛否両論だとは思うが客演や原作ものが増えたことや
クロノスなどの前に当たったものの続きというパターンも増えてきたりしたことも違和感だった。
それでも昔の面白かったキャラメルが忘れられず通い続けたけれど
ある時友人に指摘された。
数少ない面白いと感じる芝居は原作ものであり
オリジナルの芝居は必ずつまらないと言っていると。

かつて真柴さんが、成井さんだけに書かせていると
女の子のキャラがリアルじゃなくなるという趣旨のことを仰っていて。
これは多分男性あるあるだと思う。
ジブリに出てくる女の子がみんな女神様みたいであることと同じだ。
正直それまでも、脚本に違和感を感じる時は成井さんが一人で書いている時で
文句なく面白いと思える時は真柴さんと二人で書いている時だった
ということが多かった。
キャラメルは仮脚本があり、エチュードで作り、それを清書して作る
と聞いたことがあるのだが、
これは面白いこれは良くないと感じる人が身内にいなかったのか
いても意見を聞き入れられないのか言える環境でないのか
いずれにせよ昔の公演ほどの”力”を私は感じられなくなっていった。

それから、西川さんのこともあった。
ご病気のことは知っているし、復帰してくれた時はとても嬉しかった。
老人の役やあまりセリフがない役だとあまり違和感はないものの、
普通の役をした時にどうしても聞き取れないことが多く
滑舌だけではなく声の小ささも気になった。
それでもファンにとっては理由を知っているから仕方がないと思えるけれど、
一度など見に来ていた女子高生達が帰りに
「あのおじさん何なのやる気ないのかな」とがっかりした様子で
言っていたのがとてもショックだった。
掴まえて事情を話すべきかとも思ったがそういうことではないと思うのだ。
もちろん事前に注釈を入れて、聞き苦しいかもしれないが
許してくれとこうことも一つの手だとは思う。
だがそれにしても、100%のものを提供できていないということは
厳しいかもしれないが事実なのだ。
昔は5000円弱でみられたキャラメルの舞台が1万円弱という状態で
小屋が広くなったわけでもなく
演出にお金かけられるようになったわけでもない
寧ろ本がつまらないと言っている状況で
この上セリフが聞き取れないとなればかなり辛いものがある。

運営についてのあれこれ

ニコニコ動画のチャンネルが始まった時
過去作が公式に手軽に課金して見られることを期待してとてもわくわくした。
それで、正直に言えばそこまで見たくもない演目も全て
応援のつもりで購入した。
しかし特に過去作の上映の続報が入ってこず
見に行くと劇団員のおしゃべりなど
昔Podcastでやっていたもの以下の内容のものしかなく
これで有料チャンネルにするのはいかがなものかと思ってしまった。
その後利権関係などもあったのかコンテンツは増えず
気づけば無料チャンネルになっていた。
初めは演劇界を変えてやるくらいの勢いでサービスを始めた印象だったのに
がっかりしてしまった。

それに加えて劇団の裏事情というのも引っかかるところだった。
簡単に言うならば経営難であるということで
包み隠さず話してくれるところがキャラメルらしいとも思い
応援もしたいと思って、違和感を覚えつつも芝居を観に行った。
だがとても友達を誘って見に行けるほど、自信をもって薦められるものでは
私の中ではなくなっていた。
そして経営難についての理由として、
東日本大震災を上げていることも気にかかった。
確かに当日を含め直後は芝居だけでなく飲食などの娯楽全てが
不謹慎とみなされ、金曜日の東京の夜でも
居酒屋ががらんとしていることも普通だった。
町中で節電のためにという張り紙をするようになり
駅や施設など全てが薄暗くなった。

震災で被害を被ったのはキャラメルだけではない。
演劇業界だけに限ったとしても、全ての演劇業界が打撃を被っただろう。
そして自分の体感では、あの時ほどの落ち込みは
すっかり元通りとまで言えずとも回復している。
あれだけ節電と言っていた真っ暗な駅も、全ての照明がつけられて
明るくなった。
にも関わらず、なぜいつまでもキャラメルボックスは
東日本大震災のせいで客が減ったままで資金難に陥っているのか。
チケット代は上がり続けハーフプライスもやらなくなり
だが肝心の芝居の質は下がっているので
チケット代に見合わなくなっている。
全てが悪循環だった。

オーナーズクラブを発表した時もそうだ。
別にファンから寄付金を募ること自体を否定するものではない。
ただ、投資や寄付を募るならそれなりの価値は必要だと思う。
応援したいと思えるだけの価値を提供してくれていて、
ある程度のバックはさすがに必要だと思う。
クラウドファンディングを見ていても、成功しているものはそうだと思う。
本当に欲しいものをいち早く買える。
みんなが求めている夢が実現されるために使われる。

キャラメルが発表したオーナーズクラブは、一口2万円からと決まっていた。
自分が知る限りのCFからすれば、まず最低価格が高い。
そして、お金を出してできることといえば意見を言えるということと、
年間観客動員数が75%を超えれば 、キャラメルボックスで使える商品券などののお礼があるということ。
正直それだけなのである。
バックステージを見たり年間フリーパスしたりしたいのなら
最低20万円もしくは100万円以上支払わなければならない。
投資や寄付ではなく会員の権利とお礼の引換券を購入するものという考え方のようだったが
20万以上出さないとそれなりの権利はもらえないし、
動員数が75%を超えなければ口数別のお礼についてももらえない。
内容を見て、お金を払おうという気に私はなれなかった。

観に行かなくなった今聞いた活動休止のニュース

度々言われている内輪ネタというのは
それ自体は悪いことだとは思わない。
知っている人はより楽しめるし、知らない人は普通のネタとして楽しめる。
それが良い内輪ネタだと思う。
キャラメルの場合は元ネタを知らないと、
なぜこんないじり方をするのか分からないことが正直言ってある。
それでも一言二言なら良いと思う。スルーできるので。
しかしある公演を見に行った時、
劇中劇で過去のキャラメルの劇をやり始めたことがあった。
もちろん古参ファンはキャーキャー騒いで喜んでいたが
ネタとしてもあまりにも長く普通にワンシーン演ってしまったし
その時誘って一緒に見ていた友人はその元ネタの舞台を見たことはなく
見終わってから私から事情を説明した。
その人は、

みんなが喜んでいるからそういうことだろうと思ったと言ってはくれたが、
長時間続く、説明がなければわからないネタは
本当にただの内輪ネタでしかなく、自己満足でしかない。

公演数が少なくなってきて自分の都合と合いづらくなってきたことも手伝って
結局最後に見に行ったのは2017年のティアーズラインだ。
そしてこのティアーズラインも、
自分の中ではあまり面白くなかったという印象で終わってしまっている。

大好きだった頃のキャラメルボックスだったら
中止の発表をされたら純粋に傷ついて落ち込んだと思う。
今寂しいことは寂しいけれど、
モヤモヤしている気持ちの方が強いことがとても悲しい。

何かあっても続けられるようにということで
株式会社を起こしたりリスクを分散したりしていると話していたキャラメル。
今までなら矢面に立っていた加藤さんは出てこないどころか
Twitterを削除してしまっていた。
ご家族のこともあり慮ることはあるとは言え
それはここのところキャラメルから離れていて事情を知らない人達には
窺い知れないところだと思う。
実際活動休止のニュースに対して、多くの人のコメントが
昔好きだった、昔見に行っていた
突然なんでそんなことに? といった感じで
数年単位で公演にいかないどころか劇団の情報からも
離れていた人たちが多いことが察せられた。

代表の成井さんのコメントだけで
しかも当日の夜9時に挨拶文を出すだけというやり方も
モヤモヤの要因のひとつだ。

今までファンを大事にしていると言っていた劇団が
そんなやり方で一方的な発表をする。
解散ではなく休止だと言ったところで、自分は素直に信じられない。
数日前まで公演をしていてその場で発表するわけでもなかったなら
劇場に足を運んだファンは次の公演を楽しみにしていたのではないのだろうか。

今年に入って数ヶ月も話し合いをしてきたのだから
発表する気になればもっと早くに発表できたはずだ。
発表しないという選択肢を取ったこともその話し合いの結果なのだろうか。
私としては誠意がないように感じられてしまった。
しかも理由が諸事情としか説明されていないし、
既に発表していた次回公演も無期限延期になってしまう。
さらに、
”各劇団員はそれぞれの各劇団員はそれぞれの場で芝居作りを継続”する
といったところで、劇団以外のところで自分で場所を確立し
芝居をできる場所を持てている劇団員が一体何人いるだろう。

活動休止という事実についてなのだから、
どんな声明を出したところで納得がいかない人は一定数いるとは思う。
でもそれでも、一言で言うならキャラメルらしくないと思ってしまった。

劇団員によってはブログに書いたりTwitterに書いたりしてはいるが
全員ではないし、発表の後に謝罪やお礼を述べているのみだ。
近江屋さんや他の劇団の人のコメントなどを見ても、
外部の人に事前に挨拶をしていた感じもしない。
梶尾真治さんも驚いておられたようだし。
そして加藤さんは前述の通りだが、仲村さんも何の発言もしていないことが
違和感しかない。
ネビュラのホームページも表示されない状態。

翌日の1日になって、ネバーランドアーツに所属していた俳優は
仲村さんが以前にたちあげている会社NAPPOS UNITEDに
全員移籍したという知らせが

ネバーランドアーツ HPに掲載されたのみ。
更には6月3日、サポーターズクラブのサイトに
事務局では劇団運営会社から詳細を確認できていない、今後のクラブ運営については調整中という案内が出た。

ネットで見かけた「まるで夜逃げみたい」という感想がしっくりきてしまう。

いつかは活動縮小や休止はするかもしれないとは思っていた。
だが、まさかこんなモヤモヤする形での発表と実行になるとは
流石に思っていなかった。

せめてファンクラブに入っていた人だけにでも
もう少し詳しい説明がないのだろうか。

劇団員を応援したい気持ちはある反面、
モヤモヤした気持ちが大きすぎて、
劇団員が出演する他のプロデュース公演のチケットを買う気持ちにまで
まだなれないでいる。

アバター画像

say

好きなもの ✿ 犬、音楽、本、写真、刀、道、着物、携帯、パソコン、甘いもの、お酒、雪、桜、花火、バイク、お散歩、雨の日に家の窓から外を眺める、美術館や劇場に行く、歌を歌う、絵を描く