自分はライブへ行った時、みんなの顔が見たくなって客席を見回すことがあるから
うみ子さんの気持ちもわかる気がする。
海くんを家に誘うのは無理がありつつおばさんだから言えるというのは分かるし
海くんもちょっと変わった子で一緒に映画を見たり
踏み込んだことを言ってくれるのが良い。
1話の終わりの
『エンドロールが流れていく。新しい物語のために』
がわくわくする。

うみ子さんはなんだかんだで行動力がある。
自分なら待つか、学校に届けてもキャンパスを見ては回らないだろう。場違い感で怖くなってしまうと思う。
「お父さんが生きててもそのまま幸せだったろうけど
お父さんがいなくても新しい幸せみつけていいんだよ」
という娘さんの言葉が素敵だった。お父さんは
「お母さんが好きなことしてるの変わらず笑ってみてると思うよ」。
畑は違ってもクリエイターだから理解もあるのだと思う。
そして本当に大学受験にチャレンジをするところが恰好良い。

面接で学長が何故大学なのかと訊くところも良かった。
確かに映像を撮りたいだけなら現代でうみ子さんほどもう大人なら回り道ですらあるかもしれない。
しかし本気で映画を作りたい人たちと同じ学舎で学ぶこと。それは得難い経験になるだろう。

海くんがちゃんと名前で呼んでくれるのが嬉しい。
モヤモヤしていてのにただの老後の趣味だからと自分で言ってしまうけれど、
海くんがうみ子さんの撮ったものをちゃんと作品と呼んでくれて、面白いと言ってくれるのが温かい気持ちになる。

海くんにご飯が食べたいと言われて、折角懐いた猫に餌をあげたいと思っているうみ子さんが可愛い。
人のためにご飯を作るのが久し振りなことに気付いて、動画を撮りながら
「まだまだちゃんと、寂しいなぁ」と言うのが切ない。
映画を老後の趣味と言った事を『思ってもいない事』だとちゃんと分かっている海くんが良い。
自分のやりたい道を親から趣味と否定された経験があって、友達に「嘘をつかせた」後悔がある。
うみ子さんも話を聞いて自分が海くんを傷付けたのだと気がつくところが優しい。
『取り返せないものがあることをクラスメイトよりは知っている』。

作る人と作らない人の境界線は船を出すかどうか。
船が最初からクルーザーの人もイカダの人もいるけれど、誰でも船は出せる。
「私はあの日、目の前に海があることに気づいた」
海くんの驚きと最高の笑顔、そして海くんで映画を撮りたいといううみ子さんの決意。
全てが素敵でまるで映画を見ているようなシーンだった。