こちらを先に読んで、後からNaturalを読んだ。
ただどちらを先に読んでも、それぞれきちんと深く描写がされていて面白い内容。

能の家に生まれて小さいときからお舞台に立つのが普通だった憲ちゃんを主人公に
彼が語る調子で物語が進んでいく。
単純に能の入門にも良いと思う。

改めて読み返してみたら、1巻からなかなかにヘビーというか
いろんな事件が巻きおこっていてすごい物語だ。
みんな良いキャラなのだが、母方のおじいちゃんがまたちょっと突き抜けていて粋だ。
憲ちゃんが痴漢の事件に巻き込まれた時
心配をかけないよう黙っていたことに対して
「家族には言いな。わかったとき情けねぇからさ」
と言ったところも恰好良かった。
水臭いとかちゃんと言えよ、じゃないこの愛のこもった言い方が素敵だ。

楽くんの茶髪のエピソードもとても好き。
確かにひとりだけ髪色が薄くてお客さんがそこに注目してしまうことで集中が切れてしまうのはありえる。
生まれつきなのかそうでないかはお客さんにはわからないし、『邪魔になる』という意見は
確かにそれはそれでその通りだとも思うのだ。

楽くんにとって、能で頭などをつけたら髪が見えなくなり
中身で勝負なことが自由で怖くて、
だから髪を染めてもいいと思った、という逆説的な感じで自然に納得してそう思えたところが
読んでいる身としても腑に落ちた。
がっかりしてしまう憲ちゃんの気持ちもわからなくもないし
わざわざ染髪剤を宅配便で送り返してくる楽くんが流石だ。

本筋とは離れるが、ミュールやヒールでも
きちんと足裏に力を入れて歩けばあんなにうるさい音はしないのだが。
下駄や草履を履いていた時代ならあり得なかったろうが
力を入れないで歩く人が増えたのだろうと思う。

拷問芸能と冗談めかして描かれてあるが
野外での虫や風などもう少しなんとかならないものだろうか。
それでも帰ってきたくなるなにか。
それがあるから帰ってくるし、
だからこそ見る者も魅力を感じるのだろう。