「お年寄りの為に獅子舞やってください。一銭も払えませんが。。。」
なんて老人ホームからの問い合わせが年間に50件近くある。「僕も生まれ育った土地のご年配の方です、
感謝もありますので交通費だけでいいですよ。」
なんてわざと葉っぱかけてみるけど、
「いやぁ、払えないんですけどね。でも喜んでもらいたいんですよ。」
なんていう。
「お前が企画してるんだから本当にお年寄りの為なら
お前が身銭切れって言ってるんだよ。」
って思うけど、ばかばかしいから言わない。
ひねくれているがそんな言い回しされると妙にやる気が起きない。「お年寄りの為に獅子舞やってください。一銭も払えませんが。。。」じゃなくて、
「今経営難でお金がないんですが、どうか獅子舞やって頂けませんか?」
と言われれば男気見せるかもしれないし
「ありがとうございました。
お年寄りの方が喜んでくれましたよ」じゃなくて、「ありがとうございました。
これでお客さんが増えて景気がよくなったら必ず次はお礼します。」
って言われれば納得するのである。何をかっこつけてるのか、年寄りを利用して。芸の価値は金だけではなくて、もっと価値のある価値である。
昔こんな事があった。「お兄ちゃん。友達が誕生日なんだ獅子舞やってよ」
なんていう7歳の子供がやってきた。「嫌だよ、獅子舞を仕事にしているんです。ただでなんてやりません。」
なんて断る。ほんの冗談の会話である。
ところがこの子、5人の友達を連れてきて、500円持ってきた。
「これしか払えないけど、やってください。」
「本気だったのか、やってやるよ、(500円)いいからしまっておきな」
「だってお兄ちゃんの仕事なんだからそれはだめだ」
っと言って引っ込めない。。。5人で100円ずつ集めて持ってきたらしい。その日の夕方、家にいろんな細工とお菓子を用意して獅子舞をした。
「今日はお兄ちゃんが引き受けてくれたからいい誕生日になったよ、【ありがとう】」金だけの価値で言えばお菓子も細工も身銭きってるので赤字!
だけど、もっとすごく大事な事を教わった。
それから二年たつけど、その500円はなぜか使えないし
未だにこの子に会うと頭が下がるのである。この子は俺にとってはなかなかの旦那である。